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2-2 高度技術創出プロセスの特徴

 

本調査研究を進めるにあたり、まず造船分野における研究開発プロセスの特徴、特に本調査研究のタイトルにもなっている「高度技術」を創出するプロセスについて検討する。

 

(1)高度技術創出プロセスとは

造船分野における高度技術創出プロセスは、図2-6に示すような内容になると考えられる。すなわち、一般のR&Dプロセスにおける基礎研究、応用研究、開発研究、商品化研究との対比で考えると、それぞれが以下の4つのプロセスに対応すると考えられる。

 

?要素技術創出(またはシーズ創出)

船舶の推進性能や運動性能、あるいは強度、構造等に関連する技術開発で、船舶の基礎的な要素技術の創出及び開発のプロセスである。

 

?コンセプト創出(または価値開発)

船舶の新しいコンセプトを創出するプロセスで、その内容により、シーズ型(例えば超電導船や燃料電池船がこれに該当する)、ニーズ対応型(例えばコンテナ船、VLCC)、ニーズ創出型(例えばTSL)に分類される。

 

?製品化

創出されたコンセプトを具体的な船舶に作り上げるプロセスで、基本的な設計、建造プロセスがこれに該当するが、製品として成立させるためのコスト低減化のための技術開発プロセスもこれに含まれる。また、既存の船舶の場合は、製品改善技術や生産性向上技術の開発プロセスもこれに該当する。

 

?商品化

製品化された船舶を、各社が差別化あるいは高付加価値化するためのプロセスである。上記の製品化プロセスに、これが組み込まれることもありうる。

 

(2)創造発展型技術開発と継続発展型技術開発

上述した高度技術創出プロセスは、大きく新商品開発を目的とした創造発展型技術開発と、既存商品開発を目的とした継続発展型技術開発に分けられる。それぞれの内容、特徴は次のように表現できる。

 

?創造発展型技術開発

新しいコンセプトを採用した船舶等を創出し、それを具体的な商品に結び付ける技術開発のことを指す。通常、この種の開発には多額の資金が必要であり、特に最近は個別の企業がそれに取り組むのは非常にリスキーになっている。

 

?継続発展型技術開発

既存の船舶に関する技術開発のことを指す。今後、環境、安全等に関するニーズに対応させることで差別化を図ることも可能であるが、環境、安全に関する技術開発は国が主導で行われるケースも多いので、企業が純粋に取り組める部分で、差別化につながる技術開発は非常に少なくなっていると言ってもよい。そのような意味からすれば、例えば型式パッケージ化や標準船化が1つの重要な開発の方向性として位置付けられる。

 

 

 

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