3.3 プロセスモデリング技術の調査
造船業のコンカレントエンジニアリングを支援していくうえで、プロセスモデルは重要な役割を果たす。造船業におけるプロセスモデルを検討するに当たり、造船業における様々なプロセスをモデル化するには、まずプロセスを記述するための表現方法が必要になる。そこで、本開発研究ではプロセスモデル構築のために、プロセス記述を含めたプロセスモデリングに関する技術調査を行った。本章では、プロセス記述の手法であるIDEF3及びWorkflow Management Coalition(WfMC)で想定しているワークフローモデル、そして、市販のワークフロー管理システム製品に関する調査結果を述べる。
3.3.1 IDEF3によるプロセス記述の概要
(1) IDEF3の背景と目的
IDEFは1970年代に米国で開発された構造化分析手法であり、その概要は2.3.2に述べた通りである。IDEF3は、IDEFシリーズの一つとして開発されたプロセス記述獲得手法(Process Description Capture Method)である。
IDEFでは元々IDEF0という手法が定められており、業務として行っている内容を静的に表現するモデリング手法である。これは特に事務手続等の定型作業が中心の業務を対象としたBPRの実現に大きな成果をもたらした。しかし、IDEF0を非定型作業、例えば作業者個人の技量や経験に作業内容が依存する製品設計というような業務に適用するには困難が生する。それは、IDEF0が表現する内容は基本的に対象の系が「何を」行っているかということであり、その行う内容が具体的に「どのように」行われているかについては表現していないからである。つまり、IDEF0では行う作業及びそれらの間を行き来するものや情報の流れを静的に表現するが、それらが実際の時間軸に沿ってどのような手順で行われているのか、あるいはその作業はどのような意志決定に基づいているのかということは記述しない。これが事務手続のような定型作業を対象とする場合であれば、「何を」やるかさえ分かればそれを「どう」やるかは自明である場合が多く問題にはならない。しかし、例えば設計のような非定型作業の場合は「どう」やるかを表現することがむしろ目的となる場合が多い。
そこで、上に述べたように対象となる業務がどのような順序で、どのような意志決定を経て行われているのかというプロセスを表現する手法が望まれた。このような背景で開発されたのがIDEF3である。
IDEF3の目的はある分野のエキスパートが持つ、特定の組織におけるプロセスに関する知識を表現するための体系的な手法を提供することである。
(2) IDEF3の特徴
IDEF3は、プロセス記述を獲得するための方法論とプロセスを表現するための言語とい