議 長 報 告
今回はナホトカ号の流出油事故を機に、過去に重大な流出油事故の防除活動を経験された各国の担当者から、ナホトカ号の事故を含めその経験や教訓を伺うと共に、相互の意見を交換することにより、今後の海洋における大量流出油事故対策の指針を得たいという事でこのシンポジウムを開催いたしましたが、各国のゲストスピーカーから大変貴重な話を伺うことができ、又ゲストスピーカーの間で予想以上に活発な討議が交わされ、正に専門家会議と呼ぶにふさわしい極めて有意義な会議であったと思います。
まとめる時間が十分ありませんので、あるいは皮相な見方になるかも知れませんが、私なりに感じた事を以下に述べて、シンポジウムの締括りにしたいと存じます。
1. 防除活動は初動が大切で、一刻も早い立上りが必要であること。
そのためには各レベルでのcontingency planの確立と協力体制の確立が必要であること。
2. 防除活動では、不確定性の中での決断が必要となるので、一刻も早い情報提供と、それを防除に従事するものが共有することが必要であること。
又公海であっても、事故を起こした船について、旗国、船主、運航者からの一刻も早い情報提供が義務づけれることが望ましい事。
3. 対応の一元化が望ましい。日本は縦割り行政であるので、特に一元化が必要である。
4. これに関して、現場指揮者(或いは調整者)の任命と決定権の付与が必要である。
5. 機械的回収装置の性能、特に荒天時の性能については、NOFOの海上実油実験に基づく開発や、性能評価は注目すべきである。有義波高2.5m流速1mまでとにかく回収可能であるというdataはencouragingである。
尚、これは全く私の私見ではあるが、日本では法律で洋上の実油実験はできないが、ナホトカ号の主船体から毎日3〜14kLの油が流出しているので、これを使って訓練や回収装置の改良あるいは分散処理剤の効果の確認等ができれば、まさに禍を転じて福となすことになるのではないか。
6. SEA EMPRESSの流出油のうち、約40%が蒸発、25%が海上で機械的に回収、2%が海岸で回収、5%が海岸の残油、残り51%のうち分散処理剤の撒布による分散が37%、自然分散が14%というdataでは、改めて荒天の海上での回収の困難なことが実感される。
特に冬の日本海での防除活動の方針は、十分にこのdataを考慮して立てる必要があろう。
又実際の海上回収作業では回収機器のメーカーのカタログ性能の20%程度と考えるのが妥当であるとの意見は留意すべきである。
又搭載型の回収器は何種類かに分けて世界共通のユニットにするのが望ましいという意見も留意すべきである。
7. SEA EMPRESSの例を見ても、分散処理剤の空中撒布が極めて有効なことが削るが、流油初期に分散処理剤を撒布するか、機械的回収を行うか、あるいは自然分散に委せる(放置する)かの判断は、陸岸に漂着