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総 合 討 論

 

工藤: 英国のどなたからでもご回答いただきたいと思います。ブレア号の事故からドナルドソン卿の"SaferSeas and Cleaner Ships"というレポートだったと思いますが、103の勧告を出しておられます。そのうち86は完全に承認されたことを知っていますが、残る四つは却下され、13が保留されています。今年の3月ぐらいの段階で英国がその様な状態であるということを伺っております。私が経験した外洋でのナホトカ号のような事故に対して、ドナルドソン卿のレポートが役立つような指摘、あるいはそれが今英国でどのように実行されているか、現状を伺いたいと存じます。

ケインズフォード: ドナルドソン卿の報告は、私の講演でも申しましたように、かなりの影響を英国で及ぼしているのみならず、世界中に影響を及ぼしたかと思います。というのも、大変熟慮された有用な文書として受け止められたからです。ですから、英国政府としても提案された勧告については真剣に検討して、80以上の勧告が既に実施に移されております。1997年の海運及び海上安全法案が実は選挙の前に議会を通ったので、勧告の多くがこの海運法のもとで実行されております。それは汚染指定地域を200海里の外にまで設定し、汚染の罰金を5倍に増やしたものでした。MARPOLの条約の規制に違反した場合の罰金を25万ポンドにし、又、事故解決に所管大臣が介入する項目を増加させました。その介入及び指導は港湾当局、水先案内人、港湾管理人等々にまで及んでいます。全ての主要な提言については十分熟慮され、検討されています。

また、先の法案に盛り込みましたが、我々は必要ならば後で地方白治体に海岸の浄化処理及び緊急防災計画を策定する場合に、法律的義務を課す権限を持っています。

講演で強調しましたように、現在は自発的な法案でありますが、必要ならば法的手段によって規則にすることができます。

又、懸案中の勧告案には国際的な合意が必要であり、現在IMOで討議中であります。そのために実施に時間がかかっているのです。

四つ却下された理由は正確には覚えていませんが、油濁サービスについては財務的制約があったために実施できなかったということだと思います。英国の海運や商業が他国より不利な立場になってはならないという配慮があったと思います。

それから、ドナルドソン卿が、シー・エンプレス号の事故後のサルベージに関連して、国家緊急防災計画の再検討の批准に参加される可能性があります。そのうちにドナルドソン卿からもっといろいろな提言が聞けるかもしれません。

今市: 分散処理剤がきわめて効果的だということはよく分かりましたが、分散処理剤そのものの毒性はあまり問題にならないのでしょうか、魚が油臭くなるということですが、油の粒子が海中で魚のエラや消化器官に害を及ぼすのでしょうか。プランクトンも含めての話を詳しく教えていただきたいと思います。

ルネル: 分散処理剤の毒性自体についてですが、近年の分散処理剤は非常に毒性が低くなっています。分散処理剤の使用を認めている殆どの国は、毒性は分散処理剤から来るのではなく、油が水中に分散されるところから来るということを認めています。ですから、多くの分散処理剤を使っている国は、分散処理剤の毒性の試験をする際に、微生物に分散処理剤を散布してテストするのではなく、油に散布したときに油自体の毒性

 

 

 

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