ころである。従って、工業等特別整備地域と最も異なる政策は、まず最初に、人材育成の場の学校、大学、具体的には、日本の場合には工業専門学校、インダストリアルカレッジを作って人材供給をする一方、基礎的なインフラ、水の供給、用地の造成、港湾の新規開発等を中心にして工業の誘導、開発を目指してきた。従って、少し長い時間がかかった。
これに対して、工業等特別整備地域は、人材を比較的近い大都市の東京や大阪から供給でき、水の開発等も今まで近代化以来100年の間にかなりやってきたので、容易にできる形になったので、早くにインダストリアリゼーンヨンの芽が出た。投下する資本も少なくて済んだ。
従って、稲村先生のヴィエトナムへのアドバイスは、段階を踏まえて開発を考えろというように提案していると私は聞いた。資本が少なくて、インフラの整備水準がまだ大変劣っている時期には、ハノイとホーチミンを中心にした少し広域的なところだけを集中的に工事して、国民経済の力を上げて、それから地方の開発をするようにしたらどうかという提案ではないかと私は聞いた。
このときに、政策として留意しなければならないのは2つある。
1)前述のように、都市に圧力がかかってくるので、都市整備を先行的に行っておく必要がある。
2)ヴィエトナムなどの場合には、今まで国全体での工業化の水準が低かったので、人材育成、技術開発という、ややソフトな領域での努力も集中的に行っていくことが重要。
都市の交通を中心とするインフラの整備は、工業化の有無にかかわらず早急に手がけなければならない課題である。
日本の事例をみると、100年前の日本の人口は3,500万人、そのうち農民が80%であった。これが1945年時点で人口7,000万人、農業人口50%というように変わった。現在、総人口が1億2,500万人、農業人口が8%になった。東京、大阪、その他札幌、仙台というような人口100万人以上の都市は、その就業の約3分2が第三次産業であるので、工業化だけが都市化を押し進めている力ではない。従って、程度の差は多少あれ、工業化と別に大都市もどんどん膨れてきているので、これに対する対応は早目早目にやっておかないとバンコクのように(都市機能が)パンクする。
都市交通も同じように段階的な整備を考えていったらいいということを私の意見として追加するが、それは、これだけ大量に発生している都市の交通をオートバイと自家用車に依存していたならば、ホーチミンは間もなく死の街になることは間違いない。かといって、今、鉄道に投資する資金が不足し、調達できないのであれば、交通の規制策を十分にとって、バスをまず導入する。次の段階として、鉄道がそれをしょって立てるようにしていくというように、少し段階的に計画を立てることをお勧めしたい。