の要望は、どの様にして様々な輸送手段を適正かつ効果的に運営していくかだけでなく、運輸基盤施設全般の整備をどの様に進めていくかについてのものです。これは非常に困難な責務であることはいうまでもありません。しかし、我々は、ベトナムの運輸セクターが目指すべき目標を可能な限り具体的に提起していきたいと考えています。即ち、いかにして運輸セクターの開発を同時的かつ相互調和的に進めていくか、また、いかにして様々な輸送手段の間のバランスを保ちつつ整備していくかという課題です。同時に、輸送関連施設の建造・運営費を節約し、最大の社会経済的な便益を確保する必要があります。短く表現すると、相互調和(Harmony)、効果(Effectiveness)、経済性(Economy)の三つが我が国運輸セクターの目指すべき目標ということになります。この三つの目標は、実は相互に密接に関連しています。
少し説明を加えます。先ず、経済性(Economy)という標語について、その意味するところを過不足なく理解する必要があります。経済性とは、如何にして運輸基盤施設システムを整備し、かつ輸送サービスを運営すれば、輸送コストを最小化することができるか、ということです。周知のことではありますが、価格競争に基づく財・サービスの提供が市場経済の要諦です。従って、輸送コストはできるだけ低い方が望ましい。低コストは安価な物流をもたらし、運輸サービスの競争力を引き上げます。社会経済的な観点からは、このように経済性(Economy)という標語を説明することができましょう。
しかし、我々としては、別の角度からもこの標語を理解したい。即ち、どのような運輸基盤施設の整備が、経済的に正当化できるのかという問題意識です。東南アジア諸国の昨今の混乱を鑑みるに、この角度からの検討は特に重要であるというのが私見であります。運輸基盤施設を含む不動産への投資が嵩高であったことが、東南アジア諸国における今日の金融危機をもたらした原因の一つであると伝えられているではありませんか。
ここで今日的な事例を私なりに紹介させてください。交通混雑を解消するため、バンコク市では28件もの超大型プロジェクトが策定され、これらの案件に対して合計500億ドルの投資が決定されました。かくも多数の大型案件を策定し、かくも巨額の資金を投下せざるを得なかったのは、そもそも運輸施設の整備が相互調和的かつ効果的になされていなかったからなのではないでしょうか?バンコクでは、株式保有銀行数行が破産したというような報道が人々の耳目を集めましたが、ある大型案件がその開始から僅か二週間後に中止されたというニュースについては、世間の関心が薄かったようです。
ここで私は、基盤施設整備における経済性の追求が如何に重要であるかを強調したいと思います。開発政策を策定し、マスタープランを作成する際に、我々は如何にして調和的で