はじめに
地域の歴史や自然に根ざした豊かなウォーターフロントづくりは、活力ある地域社会を形成し、充実した市民生活を実現していきます。
港湾は、総合的な空間として発展することがますます求められ、各方面から大きな期待が寄せられています。
一方、欧米諸国や、アジア太平洋諸国においても、ウォーターフロントを地域の核となる賑わい空間として整備し、地域住民の憩いの場や観光客の必見スポットとして注目を浴びている地域が増えてきています。
(財)港湾空間高度化センターでは、平成6年度より日本財団の補助金を受け、「アジア太平洋ウォーターフロント開発に係る共同研究促進事業」を実施しており、諸外国の実務者・研究者を招聘して諸外国とのウォーターフロント開発に関する情報交換を行うとともに、環境と共生し市民に開かれたウォーターフロント開発のあり方に関する共同研究を行っております。
平成9年度は、アメリカ、イギリス及びブラジルより3人の海外研究者、実務者を招聘し、共同研究を実施しました。日本滞在期間内に日本各地のウォーターフロント開発の現状を視察するとともに、運輸省港湾局、各港港湾管理者、フェリー船社等との情報交換や(財)港湾空間高度化センターの研究員との意見交換などにより、各専門分野に関して母国と日本とのウォーターフロント開発の比較研究を行い、相互の理解を深めることが出来、21世紀に向けたウォーターフロント開発のあり方を考えるよい機会となりました。
招聘した研究者と研究内容は次のとおりです。
・Mr.Richard Wayne Berman
米国ニューヨーク州登録建築家、現在ペンシルバニア大学博士課程在籍
(歴史的構造物を保存・活用したウォーターフロント開発、地元市民・観光客の意向を踏まえたウォーターフロント開発のあり方-景観に統計的手法を取り入れた異色の研究手法を横浜MM21地区で実現-)
・Mr.Alfred John Baird
英国ネピア大学経営学科講師、現在博士号取得に向け研究中
(日英のフェリー輸送事業の比較―規制緩和とユーラシア大陸へのフェリー航路開発の提言―)
・Mr.Ayrton Costa Xavier
ブラジル・リオデジャネイロ埠頭公社 エンジニアリング・開発ディレクター
(埠頭の再開発によるウォーターフロント開発の日伯比較―再開発先進国日本から学びつつブラジル流開発を提言―)
本報告書は、このうちMr.Ayrton Costa Xavierとの共同研究を取りまとめたものです。
平成10年3月
(財)港湾空間高度化センター
理事長 戸嶋英樹