とした。すなわち対象数を増やすことにより,さらにその有用性を明確にすることができる。
方法としては,昭和63年から平成4年度に航空大学校に入学した学生のうち,卒業後の脳波が入手可能であった95名(入試時平均21.4歳)の入試時と卒業後(入試時脳波から約3または4年後,平均3.1年後)の脳波記録を判読検討した。基礎律動を構成する諸要素(α波,徐波それぞれの周波数,振幅,出現部位,出現量および後頭三角波などの特徴的な波形)を詳細に検討,類型化した。さらに突発性脳波異常についても検討し,脳波総合判定(正常・境界・異常の3段階)を行なった。
結果としては,入試時の脳波総合判定では,18名(18.9%)が境界であり,卒業後では,これら18名のうち5名は境界のままであったが,他の13名は正常となり,結果として95名中82名(86.3%)が正常であった。一方,入試時正常であった者のうち8名が卒業後に境界となったが,そのうち5名は基礎律動の異常で覚醒度との関係は否定できず,突発性脳波活動の出現した残りの3名中2名は後頭三角波を伴うものであった。
脳波発達と関連した基礎律動の縦断的変化は,後頭三角波出現群で顕著に認められ,徐波では最低周波数の増加と最高振幅の減少が認められた。一方,α波は周波数,振幅とも縦断的に変化がなく,20歳前後がα波の成熟時期であることが示唆された。
後頭三角波は,入学時32名(33.6%)に認められたが,その後16名で消失し,脳波発達過程あるいは成熟との関連が縦断的にも確認された。
突発性脳波異常は,入試時8名に徐波群発を認めたが,4名は卒業後には認めなくなった。入試時には認めず,卒業後において初めて徐波群発を認めた者は2名いたが,そのうち1名は入試時より後頭三角波を認めていた。
以上から,脳の成熟過程におけるある時点での成熟度を知るパラメータとしての後頭三角波や,α波や徐波の周波数,振幅などの有用性を確認できた。さらに対象を増やし,脳の成熟度と突発性脳波異常や基礎律動異常