帰式が得られた。ボランティアは視物質の分光特性には差がないと考えられるため、このシフトは水晶体の黄色化など中間透光体の影響が関与している可能性が示唆された。
5. まとめ
視覚の加齢変化に関し、本年度は同一症例の視野の加齢変化、青錐体系感度、視力および色覚の加齢変化について検討した。
1) 動的視野について、同一症例の加齢変化を検討したところ、30歳代後半より視野の面積および周囲長が減少することが示された。
2) 青錐体系感度は、眼内レンズ挿入眼においても加齢により低下し、加齢に伴う青黄軸の混同の要因としては、主として青錐体系反応の低下によることが示唆された。
3) 視力は、眼内レンズ挿入眼においても加齢により低下することが示され、視力の加齢変化の要因として、水晶体の黄色化などの光学的要因とともに、網膜から中枢にかけての加齢変化の関与が大きいことが確認された。
4) アノマロスコープにおいて加齢による縁側へのシフトは水晶体の黄色化など中間透光体の影響が関与している可能性が示唆された。
以上、各種視機能の年代別変化を検討した結果、いずれも加齢による変化を伴うことが確認された。
文献
1) 増田寛次郎・他編:眼科学大系、第10巻B 加齢と眼、中山書店 1995.
2) 航空身体検査の手引き(平成7年4月):運輸省・航空局・技術部乗員課監修、財団法人航空医学研究センター発行.
3) 北原健二、ほか。視機能測定の試み:視野の客観的判定のための研究.航空機乗員の医学適性研究報告書.航空医学研究センター.45-64,1994.
4) 北原健二、ほか.視機能測定の試み:視野の客観的判定のための研究.
航空機乗員の医学適性研究報告書.航空医学研究センター.45-64、1995.
5) 北原健二.加齢と色覚.増田寛次郎、猪俣 孟、玉井 信、本田孔士 編.
眼科学大系:10B.加齢と眼。東京:中山書店 157-161,1995.
6) 市川 宏:老化と眼の機能。臨床眼科35:926、1981.
7) 戸張幾生:老人患者の取り扱いと入院管理.―老人の視力と老人性白内障を中心として―.眼科19:59-65、1977.