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とりわけこのグループホームの徒歩圏内にある10家族の場合、グループホームの住人との関わりは双方向になっています。

グループホームの住人は、全員であるいは個人で、様々なことでボランティア宅を訪問します―食事などへの招待、調理やミシンがけの実習、人手がいる際の手伝い等々、旅行の際には愛犬を預かっていただくまでになりました。ボランティアの1人は「自分たちのしていることはボランティアというより近所づきあいという言葉の方がぴったりきます」と語っています。一方、家主の戸田氏をはじめとする隣家の人たちは、ボランティア登録をしているわけではありませんが、近所づきあいを重ねるうちに自然にボランティアの心をもって住人に接するようになりました。

 

3. グループホームでの日々

 

「戸田ホーム」には、男女各2名の知的障害者と1匹の犬が生活しています。重度の方が1名、重複障害の方が1名、ほか2名は中度障害者です。また1名の方が一般就労しているほかは、「ひかりのさとファーム」に勤務しています。

週末における帰宅は各人の判断によりますが、おおむね月1回程度です。余暇時間の過ごし方は、散歩や地域・グループホームの行事への参加といった全員で行うもののほかは、各人各様です。一般就労している女性の方は、1人で喫茶店や書店に行くことが多いほか、グループホームでの楽しみは読書や趣味の手芸です。重度の男性は、コミュニティ施設での陶芸教室や生け花教室に通っています。ボランティアの夫人の幾人かは、この教室の稽古仲間です。グループホームでの楽しみはジグソーパズルやテレビ鑑賞です。

 

4. 戸田ホームの建物とその環境

 

建物は木造の平屋一戸建てです。農家の納屋として使われていたものを改造したものです。平成8(1996)年12月に増築して個室が確保できるようになりました。それ以前は2人室×2部屋という構成でした。改築および増築はいずれも家主の負担です。増築後の家賃は月額65,000円です。面積は約68?u、決して恵まれた広さではありませんが、環境には恵まれています。

このグループホームは郊外型住宅地と農村の接する地帯に立地しています。徒歩圏内に日常生活に必要な店舗、診療所そして鉄道駅がそろっている一方で、散歩やレクリエーションにふさわしい緑地が多く残っています。また社会的な関係をみても、「戸田ホーム」を支援するボランティアが多く近隣に住んでいるだけでなく、障害者を受け入れる度量と優しさを合わせもつ伝統的な気風に富んだ地域でもあります。この立地は偶然手に入ったものではありません。家探しの基本方針を豊かな地域生活の実現においた結果なのです。

 

5. 豊かな人間関係の形成をめざして

 

すでに述べたように地域の人たちとの結びつきは理想的といえます。世話人は「近くに気軽に行き来できるグループホームがあれば言うことはない」と言います。このような結びつきを実現した裏にはどのような努力があったでしょうか。

世話人を中心とした地域への働きかけの軌跡を追ってみましょう。世話人は、1名。グループホーム開設以来、住人を支援しています。平成8年12月までは同居していましたが、増築後は隣家を借りて住んでいます。もともと福祉とは無縁の仕事をしていた人です。グループホーム開設までの半年間「まどか」で研修しています。地元の人間ではない彼女は、一貫して地域交流に熱心に取り組んできました。その名刺の裏には、『…どんなに重い障害をもっていても誰ととりかえることもできない個性的な自己実現をしています。自己実現をめざして、知的障害をもった人たちが世話人(援助者)の支援を受けながら地域の一員として、社会人として当たり前の生活をしていこうとしています。その生活の場をグループホームといいます。地域の一員としてお付き合い下さい』という言葉が印刷されています。

 

 

 

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