晴れの舞台を「杜」のイメージで
フェスティバル舞台のできるまで
地域伝統芸能フェスティバルは、熊本大会を除いて各地の多目的会場で開催されてきました。多目的会場の六千?からの無機質な空間、それをいかに楽しいお祭りの場に変えるかはプロデューサーの楽しみであるとともに悩みどころでもあります。香川大会では瀬戸内海の海と島々をイメージしたバック、岩手大会では東北の素朴さと綾なす人間をシンプルな木目と壁面装飾でというように、伝統芸能の楽しさと開催する地域のイメージをいろいろ考えながら、これまで会場づくりをしてきました。
今年の島根大会は、神話の国、祭の国というコンセプトから「杜」のイメージに決定。舞台の広さは約八百?、その両脇と袖に杉を約六十本使いたいのですが、生木だから山から切り出して直ぐ舞台に立てなければなりません。
相談に乗っていただいた島根県農林水産部林業管理課の山内さん、最初はびっくりされましたが、方々の森林組合に連絡して下さいました。「良い木が見つかりました」との連絡が入ったのが開催日の一週間前。お願いした杉は間伐材ですが、枝振りや高さ、さらに時間的な希望もあり県の森林組合連合会や木次町森林組合の皆さんにも大変ご苦労をかけてしまいました。杉の立て込みに必要な八台の機材が東京から十一トントラックで運ばれてくると、即座にトラックを木材運搬に回します。
こうして木材集積所から会場まで約二時間、四両のトラックから青々とした杉の木がクレーンで降ろされると、NHK大道具のスタッフが次々と舞台に飾りつけ、続いて照明スタッフによる朝・夕の杜のイメージ作りが深夜まで続きました。
開催当日、杉木立ちはさまざまに変容して、演じられる素晴しい伝統芸能の技に花を添え、出演者と観客の皆様双方からお褒めの言葉をいただきました。延べ二百人以上のスタッフが作り上げた晴れの舞台です。
ともあれ、次回はさらにこれ以上の舞台を作らねばとの重責がずっしりと肩にのしかかるのを感じます。