つ解剖実習に取り組ませていただきました。この実習を経験することによって、私は人間ひとりひとりに対して慈しみと尊敬の念を持ってふれあうことのできる医師になりたいと強く感じました。勿論、人間のからだそのものの精巧なしくみについても深く学ばせていただきました。このような貴重な経験をさせて下さった多くの方に感謝の念でいっぱいです。
最後に、以前私がなるほど、と思った言葉に「人の死というのは三度あるのだ。一度目はある人が亡くなったとき、そして三度目はその人を知る全ての人が亡くなったときだ。」というのがあります。私の出会ったご遺体のあの方は、今でも私の心の中に生き続けています。
解剖実習を終えて
猪口 奈緒子
四月。いよいよ三回生になって、医学部生らしい生活が始まった。わりとゆっくり過ごせた一、二回のときとはうってかわって、医学部生としての最初の洗礼ともいえる、解剖学実習が始まったのである。
私は実は、御遺体に接するのは今回が初めてではなかった。二回生のときに先輩たちのやっている解剖実習を見学させてもらったのである。そのときすでに内臓は摘出されており、足も切断されてあった。それなりの心の準備はしていたつもりであったが、それを見