ます。
医学の進歩の為とはいえ、私達未熟な学生にその心身をささげて下さる崇高な御志にただ有り難く、深く感謝申し上げます。
古来、洋の東西を問わず、医学を志す者にとって人体解剖は大きな課題でありました。
我が国でも十八世紀に初めて行われた解剖所見が山脇東洋の手によって「臓志」におさめられ、また杉田玄白の「解体新書」などを始めとして、解剖による生命の本質へと迫る努力が積み上げられてきました。 この様に人体解剖に実習は医学を志す者にとって必要不可欠であり、医師への道を選んだ時から畏れと期待のうちに、勉学の機会を待っておりました。
いざ実習に臨んで、最初のメスをご遺体に入れたとき何ともいえない思いがこみあげてきました。
人体の仕組みの妙、無駄の無い緻密な構成など、学ぶ程に感動の繰り返しでした。
また、その感動とともに、人体に対する畏敬の念がさらに深くなり、医師を志した事の重大さ、責任の重さを改めて思い知らされました。
生命現象を科学的に観察し、不調の部分を探し出し、治療する訓練を受け始めた私たちは、こののち更に研鑽を積んで医師となって世に出て活動することとなります。
その際、どのような医師になるのかという事が問われます。
医師の基本である解剖学実習の中で、ご献体下さった方の生前の事は何も存じ上げず接