交わせし夫のため その夫上と申するは現在父上や兄上の悪逆にて 七物の秦酒を盛られ 十人殿原諸ともに 非業な最期を遂げましたわいな その夫上や殿原の 菩提のために引きました 聞けば餓鬼阿弥のお殿様は 冥途へ 戻らせたもうものとある 御本復の明日には 冥途の様子問いたさまま 一筆残せしこの裏書き

申しお殿様 冥途と申しまする所はどのような所にて 我が夫様や殿原は 非がな最期を遂げし うかぷることのなられば 死出の山じか六道の 筋く三途の川端で お会いなされであれば今ここで せめて菩提のその為に 語り聞かせて下されや』
現在夫とは夢知らず 訊ぬる 心のいじらしきや 消え入るばかりいい女
判官今はたまりかね 泣き入る姫が背中撫でさすり

『アイヤ ナニ小萩 その方は常陸小萩と世を忍ぶ仮の名 本名は相模横山将監照元の息女 照手姫であろううが』
『私を照手とご存じのあなた様は』

『フフン 不思議は尤も 我こそは平判官光重とは帝より賜りし名 本名はそちが夫 小栗判官政清なる』
聞くよりまたもや驚いて

『さてはあなたが現在の 我が夫様にましますかお懐かしの我が夫様』
縁がつかしの照手をと 妹背は手に手を取り交わし 交わす面を見交わして
喜ぶことの限りなし

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