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二席

 

エコツーリズム

―持続可能な観光に向けての模索―

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序章 問題の提起

 

本論文の目的は、エコツーリズムについて検討すること、特に地球規模での発展を続ける現代の観光におけるその役割を考察することである。

「観光(tourism)」という現象は、現代社会において地球規模での広がりを見せている注1。近世まで旅行はあくまで限られた階層の人々のものでしかなかったが、19世紀初頭イギリスにおいて蒸気機関車という大量輸送機関が登場し、1841年Thomas pfCookが鉄道を利用した団体の日帰り旅行を組織、その後イギリス国内外への団体旅行の手配を行うようになったことから状況に変化がもたらされた。この団体旅行という旅行形態の誕生により旅行の商品化が可能となり、観光産業の巨大化の礎と言えるマス・ツーリズム(mass tourism)注2という現象への道筋が開かれたのである。そして1950年代以降、先進国では既存の交通機関の改良やジェット機の出現等の技術的要因と自由裁量時間の増加や所得水準の向上等の社会的。経済的要因とにより、一般の人々が観光に行くというマス・ツーリズムの時代が到来した。その現象は加速度的に拡大しながら現在まで続いている。

しかしマス・ツーリズムをめぐっては、当初からその功罪が様々に取沙汰されてきた。

まず、その社会的意義としては、安価な旅行が可能となったためにより多くの人々が観光に行くことができるようになったという点が第一に挙げられる。マス・ツーリズムによって観光が限られた人々だけのものであった時代は先進国では過去のものとなった。また、経済的にはマス・ツーリズムの進展は観光産業の市場の拡大を意味し、観光地となる国々にとっては雇用機会の創出や所得の向上等を期待させる魅力的なものであった注3

一方、旅行商品を低価格にするために一度に集中して大量に送客するというマス・ツーリズムの手法は、1960年代に入るとしだいに多くの観光地とその周辺地域において様々な環境的・社会的弊害を引き起こすようになった。例えば、交通の増加による大気汚染や騒音や渋滞、水の供給不足と下水処理施設の設備が乏しい地域への短期的な大量人口集中による水質汚染、ゴミや廃棄物の処理といった地域のインフラストラクチャーの能力に関する問題が生じただけでなく、観光客のための建造物による景観の破壊や住環境の悪化といった社会的なマイナスの影響も報告されるよ

 

 

 

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