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ヘルスケア・システムの意図するところですが、サービスの格差を埋めるためにあらゆる努力が払われているにもかかわらず、依然格差の問題が生じています。問題の一部解決のために建設された革新的なモデルに、老人ケアセンターがあります。老人ケアセンターは、通常人口の多い地域に設置されており、上記のすべてのサービス、もしくはその大半を同じ構内に備えています。各サービスの運営管理は独立していますが、運営主体は1つに統合されており、数多くの企画活動を共同で行う機会が設けられています。この連携モデルの利点は次のとおりです。

・ 広範なサービス全体にわたるコミュニケーションの改善

・ サービスの分断と格差の解消

・ ケアプランニングにおける連続性

・ 管理費の削減

・ 管理職レベルの任務の分担

・ 現職教育プログラムの共用

・ サービスのタイミングにおける柔軟性

・ 照会・移転プロセスの促進

・ スタッフおよび家族に対する支援グループの共用

・ サービス受益者および家族の委員会へのより多くの参加

長期ケアにおける連携を有効に図るためには、動的、すなわち焦点を定め、創造的で、ニーズの変化に対応するものでなければなりません。創造的な連携は、一般に公的部門のほうが目立ちやすいが、最近のホテル産業とヘルスサービスとの連携にみられるように、民間部門でも行われています。また製薬会社でも提携を結び、痴呆性老人に対するサービス能力の拡大に努めています。その一例として、製薬会社2社とアルツハイマー病協会およびアメリカ高齢化協議会との連携であるTriAD(Tree for the Management of Alzheimer's Disese)がある。これは、食品医薬品局の規定に従い製薬情報を提供する一方で、アルツハイマー病協会の地方支部の指導のもと、照会元として介護者および患者を支援することを目的としています。

今回の講演で説明した連携は、主として運営管理面ならびに財政面でのものですが、大半のヘルスケア機関が必要としている継続教育である現職教育においても連携が行われています。施設内に在宅ケアプログラムや成人デイサービスが設けられている場合、諸機関は、カリキュラム開発やスタッフ研修においてしばしば協力を図っています。痴呆性老人のケア向上に役立つ主題としては、文化的多様性、虐待防止、事故防止、身辺処理能力の最大限の活用、尊厳の維持、プライバシーと人権、行動管理などがあります。

前述のとおり、アメリカにおける痴呆性老人に対するサービスの有用性は、主として居住地と資金源によって決まります。ケアのコストは増大する一方で、裕福でない限り、総じて高齢者とその家族に多くの選択肢はありません。政府は、サービスの運営について許認可権を有し、規則を策定することにより民間部門においてさえ、システムのあらゆる側面を管理しています。

アメリカでは、複雑なサービス網全体にわたり連携関係とコミュニケーション網を確立しようと、努力が行われてきました。それにもかかわらず、高齢者のニーズと問題の評価は、決まってサービス提供者の視点で行われており、患者や介護を行っている家族の見解には十分配慮がなされていません。痴呆性老人のケアの計画にあたっては、家族または代理人とのコミュニケーションが行われていますが、サービス提供者と患者およびその家族との意見交換は必ずしも協力的、あるいは共通の目標をもって行われているとは言い難いのが現状です。今後は、これらの当事者間の連携を改善する方向で努力し、介護を行う家族に取って代わるのではなく、彼らを支援することを目指すことが必要です。

最後に、研究者として、アルツハイマー病と関連痴呆症の理解に研究活動が貢献しており、それは治療に限られたことではないことを言い添えたいと思います。また、ケアに対する革新的なアプローチを生み出した調査研究も重要です。家族とそのニーズにどのようにして手を差し伸べればよいかを学び、サービスの提供を改善したのです。

研究は、さまざまなヘルスケアサービスの連携関係を促進するばかりではなく、?@長期的研究を実施する機会の改善、?A基本的情報の改善、?B対照のための非実験群へのアクセスの改善、?C研究すべき調査結果のより適切な選択、?D同意方針の一貫性、?E情報の正確さの改善、?Fデータ収集のタイミングがより的確となる、?G標本減少が少ない、など、そこから多くを得、その結果、有効なサービス提供のために運用されています。ヘルスケアのあらゆる施設やコミュニティの連携において、目標を設定し、方針や介入の有効性を評価し、コミュニケーションや障害のある高齢者のサービスの向上に研究結果を活用するうえで、研究は今後とも積極的な役割を果たすことが必要であると考えます。

 

 

 

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