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療をもはや必要としない場合には、市町村が特別な財政負担を求められます。

この改革により、市町村は、上述の特別住宅ならびにデイケア・センターにおいて、予防ケアとヘルスケアを実践する責任も課せられました。さらに現在市町村は、障害者のために比較的単純な補助器具を提供する責任も負っています。

どの市町村も、医療責任を伴う看護婦を最低1人置かなければなりません。この看護婦は、医学的な治療ならびに安全を確保する日課、薬品の取扱い、書類の作成提出を担当します。また半数の市町村では、家庭での看護ケアの責任も引き受けています。

1995年には、65歳以上の高齢者の11%が、ホームヘルパーの援助を受けました。ホームヘルパーは、ほとんどすべての市町村で、夜間、深夜、週末を問わず利用できます。

ホームヘルパーの援助を受ける人たちの間で、痴呆に苦しむ人の数が増えるのに伴い、ホームヘルパーへの身体的・精神的要求が高まりました。次第に家庭でのケアの充実に比重が移った結果、ますます多くのホームヘルパーが准看護婦レベルの教育を受けるようになりました。

約55,000軒の民間アパートが、ホームヘルパー・サービスのネットワークに加入しています。80歳以上の高齢者の33%が、何らかの特別住宅で暮らしており、特別住宅施設の8%は、民間企業が経営しています。

すべての市町村で、移動サービスが提供されています。65歳以上の全人口の25%以上が、このサービスを利用できる障害者として認定されています。実際に、こうした人たちは格安料金のタクシーでどこへでも出掛けられます。たとえば、痴呆による障害をもつ人でもデイケア・センターへ行けるのです。

次に、ショートステイに対する需要が高まっています。現在、利用できる特別住宅の4%前後はショートステイです。

現在、痴呆専門の看護婦を置いている市町村は70にのぼりますが、288のすべての市町村で最低1人置くことが目標です。この看護婦の主な仕事は、できる限り早期に痴呆患者を発見し、これらの人々が適切な援助を適時に受けられ、だれかが自分の面倒をみてくれているという気持ちになれるよう、家族と連絡を取り続けることです。

市町村は、看護婦が実施する在宅ケアの責任も負っています。医師が必要な場合は、郡の自治体の所轄になります。

以上がケアに関するスウェーデンの概略です。次にさまざまなレベルのケア、家庭、および家族間でどのように連携を図るかについて、少し掘り下げてみたいと思います。

私はトータルなアプローチの重要性を強調したいと思います。すべての部分を同時につくり上げなければ、プロセスが適切に機能しません。市町村と郡の自治体、重度ケアとプライマリケア、病院と家庭、公的ケアと私的ケア、そのおのおのの間にネットワークを構築することがきわめて重要です。

ADEL改革の導入から6年が経過し、市町村は、現在徐々になくなりつつある「老人施設」に代わって、独自の選択肢を構築し始めており、また、異なる解決策がいくつか検討されています。

 

ケアの取り組みの連鎖を確立できるようになるには、訪問業務がまず必要とされます。ここで主要な業務遂行者となるのが、市町村の痴呆専門看護婦です。ホームヘルパーや親族、友人は、近親者が明らかな記憶障害を抱えていることに気づいたときは、看護婦に連絡を取ります。

痴呆専門看護婦の職務は、以下のとおりです。

・ 記憶障害に悩まされている人に、痴呆診断の質問を受けてもらう。

・ 病院との連絡係になる。

・ 家族の手に負えなくなったときに、痴呆患者をケア施設に移すという難しい決断を下すにあたって家族を支援する。

・ 痴呆患者に適した住宅について助言する。

・ ホームヘルパーがケアのニーズを分析するのを手助けする。

・ 関係者の監督責任を果たす。

 

このサービスは実際に市町村の財源節約に役立っています。痴呆患者の面倒をみている親族が、知識に裏づけられた支援を受けることによって、ストレスが減り、より効果的な介護ができるようになることが、その主な理由です。また、このプログラムを通じて、市町村が、推測ではなく実際の必要に基づいて、デイ・ケア・サービスと特別住宅の建設を調整できることもその理由です。

ホームヘルパーは、日常生活動作(ADL)を援助しています。たとえばホームヘルパーは、タクシーでデイケア・センターに出掛ける準備をするのを手伝うために痴呆患者の家庭を訪問することがよくあります。一部の市町村では、タクシーの運転手も同様に、痴呆症の乗客

 

 

 

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