あとがき
地域環境問題および地球的規模の環境問題、エネルギー安全保障の観点から、低公害・代替燃料自動車の普及が世界各国共通の課題となっている。本報告では、それぞれの地域、国における低公害・代替燃料自動車普及の背景、状況さらに低公害・代替燃料自動車普及促進状況、問題点等を調査した。
国情の違いがあるものの、先進各国では低公害・代替燃料自動車の普及に積極的に取り組んでいる。この調査により、いくつかの興味ある動向がわかった。
・環境先進国である北欧では、持続可能なエネルギーとしてのバイオ燃料の普及により、地域環境問題および地球的規槙の環境問題に対応しようという動きがある。しかし、普及にあたってのコスト等の課題は多く、コスト低減のためのさらなる技術開発が必要であること、そして補助はいつまでも続けられるものではなく、環境コストを価格に内在化させる政策の必要性等が浮き彫りになった。
・米国では、州ごとに独自の取り組みを行っている。ユニークなものとして、低公害・代替燃料の普及を、単に環境問題対策としてのみとらえるのではなく、農業を食料産業からバイオエネルギー産業にまで拡大させ、農業における雇用促進とリンクさせて取り組んでいることがあげられる。エタノールのコストはまだまだ高いが、農業における雇用促進という政策のもとに行っているので、エタノールの普及はあくまでも政策的課題であるという考え方で進めている。
欧州における菜種油メチルエステルの取り組みにも同じような思想が伺える。
・米国では、世界に先駆けて水素燃料電池バスのフリートテストが多大な資金をかけてスタートした。コストの問題、取扱の問題等、今後解決しなければならない課題は多いと思うが、最初から否定するのではなく、先進的な技術にチャレンジしようというフロンティア精神で進めている。地域環境問題および地球的規模の環境問題に対応するためには、このような可能性のある技術の芽を少しでも伸ばそうという姿勢が重要であると思われる。
昨年、12月に京都において地球温暖化防止会議が開催された。温暖化ガス削減に向けての数値目標が明確になり、今後はいよいよ具体的実行の段階になるわけである。低公害・代替燃料自動車は、このような観点でも運輸部門において、重要な役割を果たしていくと考えられる。
このような課題に積極的に貢献するためにも、今後とも、低公害・代替燃料自動車に関する各国の情報を収集し、その動向に注目していく必要がある。