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6. 考察

 

踏切制御システムの開発において、試験計画に示されている各種試験・測定を行い、貴重な諸データを得ることができた。個々の試験および測定結果を検討した結果の考察を以下に述べる。

 

6.1 試験結果の考察

 

6.1.1 踏切遮断時分の短縮化

 

(1) 広域列車運転状況をもとに先行列車の位置を把握し、先行列車および自列車の走行状態を、信号現示抑止を前提に実列車の運行に近づけて予測することにより、遮断開始時期を決定するアルゴリズムを確立することができた。

この遮断開始時期決定手法により踏切遮断時分の短縮が可能になり、従来の列車選別による方式と比較して大きな効果が認められる。

(2) 信号現示抑止を使用することにより、踏切開扉回数の増加が可能であることが確認できた。

(3) 本試作では列車速度を計るための速度検出器等は使用せず、軌道回路の変化と軌道回路長による平均速度を使用した。速度検出器等を使用するよりは、速度の誤差は大きくなるものの、軌道回路の連続的追跡により補正することで、誤差が軽減できることが明らかとなった。

(4) ラッシュ時間帯などでは、信号現示の最大速度まで上げないで、一定の速度制限を加えて走行させる線区がある。信号現示抑止により信号現示に制御を加えても踏切の通過部分の速度が少し遅くなるだけであり、全体からみれば、あまり運転状態に影響を与えないと思われる。

(5) 本試作システムでは現示抑止解除時期が鳴動停止時であるため、列車が踏切道に到達した後も通過し終わるまで低速で走行した。踏切道到達の条件が取れれば、信号現示を抑止している時間を必要最小限にできる。

 

6.1.2 待たされる側に立った新しい表示器

 

(1) 本装置は、後続列車の接近をあらかじめ表示しておくことで、1列車目が通過しても警報が終了しないことを待つ人に知らせる目的で作られている。この列車接近状態表示は、待つ人に対して注意を喚起するだけでなく見た目もなごむ効果があると思われる。

(2) 従来の踏切での列車接近表示器の代わりに使用できるので、新たな設置工事をする必要がないため、今後の実用化が期待できる。

 

6.1.3 踏切制御システムの信頼性向上

 

(1) 各踏切の制御装置間をネットワークで接続したことで、隣接踏切の情報を把握できたので、その情報を使用すれば、列車検知器故障時の警報持続等の軽減が可能になると考えられる。

 

 

 

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