(5)乗客誘導案内装置の試作と評価実験
乗客を混雑度の低い車両へ誘導するための手段を検討し、列車の位置、到着予測時刻、車両毎の混雑度を表示する乗客誘導案内装置を試作した。またこの乗客誘導案内装置を用いて、営団地下鉄東西線西葛西駅にて、一般の鉄道利用者に対してデモンストレーションを実施し、アンケート調査を実施した。これより、65%の乗客が同一列車内で混雑度の低い車両へ、41%の乗客が混雑度の低い次の列車へ移動する可能性があるという結果が得られた。
4.2 今後の課題
今年度の研究では4.1で述べたような研究成果を得ることができたが、乗客誘導案内装置を実用化するためには、次のような課題がある。
(1)混雑度検知方法の確立
乗客誘導案内装置に表示する主要な情報として、列車の車内混雑度がある。本研究では、混雑度検知方法として圧力センサ方式、画像処理方式を列挙、比較するにとどまったが、実用化にあたっては検出精度、処理速度、MTBF、コストについて定量的に評価する必要がある。
(2)情報伝送方式の検討
乗客誘導案内装置に車両毎の混雑度および駅への到着予測時刻を表示するためには、車上で検知した混雑度を地上に伝送することや、中央にある列車運行予測装置(列車運行シミュレータ)で予測した到着予測時刻を駅へ伝送することが必要となってくる。大都市圏の鉄道は駅間が短く、 1分程度で次駅に到着してしまう区間もあるため、情報伝送遅れを極力少なくし、乗客誘導案内装置にリアルタイムに憶報を提供できるよう、システム構成を検討し、定量的に評価する必要である。
(3)降車人数の推定方法
本研究では、列車が前駅を出発した時点で、当該駅到着時の車両毎の混雑度が検知できるという前提で、乗客誘導案内装置の画面を作成し、評価実験を実施した。実際には、列車が当該駅に到着した時点での混雑度が高くても、その駅で何人か降車すれば、乗車可能人数は増えてくる。従って、より効果的な乗客誘導が実現するためには、降車人数を前もって推定できればよいが、これは今後の課題である。
(4)乗客誘導案内装置の導入計画
乗客誘導案内装置を導入するに当たっては、表示情報の選択、設置場所の決定、許容されるコストを具体的に検討する必要がある。また、乗客誘導案内装置はこれまでにない装置であるため、乗客に正しく利用してもらうための啓蒙活動も必要である。