? 出産スケジュールの変化
1965年から始まった合計特殊出生率の低下は、出産スケジュールが変化してきたことも原因となっている。子どもを出産する年齢は、1970年には23歳が最も多かったが、1990年には27歳となっている。
【図表2-4】は、生まれた子どもの母親が何歳であるかを比較したものである。1970年には新生児の2人に1人は25歳以下の母親から生まれていたが、これは1990年には4人に1人にも満たないケースであった。1990年に生まれた子どもの3人に2人は、母親の年齢が25歳から35歳である。出産の時期が遅れているのと同時に出産間隔も長くなったために、30歳以上の出産率が高くなった。1990年には、新生児の12%は35歳以上の母親から生まれている(1980年には3.1%)。40歳以上の母親から生まれた新生児も2.1%ある(1980年には1.1%)。
平均出産年齢は戦後から低下していたが、1970年代末から毎年高くなり、1977年に26.5歳、1990年には28.3歳となった。1990年の初子出産平均年齢は26歳である。この遅れは、今までは30歳以上の出産で補われていた。従って合計特殊出生率が多少下がっても完結出生児数はおよそ2人となり、世代交代に必要な水準を僅かに下回るだけだったのである。しかし最近の合計特殊出生率低下は同じ結果はもたらさないように見える【図表2-5参照】。今日の30歳の女性たちが初子出産時期の遅れをどのように取り戻すかが問題となるわけだが、この年代はすぐ上の世代の女性より子どもの数が少ない。年齢が上がれば出産能力は低下していくばかりなので、遅れを取り戻すのは益々困難になるのである。
16歳未満の子どもが少なくとも1人はいる家族の中で、4人以上の子どもがいる家族の割合は、1968年の13.6%から1990年の5.2%にまで減少した。多子家庭の減少は1975年と1982年の国勢調査の結果に大きく現れているが、合計特殊出生率が大きく減少したのは1972年と1976年の間である。多子家庭の減少は出産間隔が長くなっていることにも起因している。つまり末子と長子の年齢差が8歳ある4人の子どもを出産する女性は、10年間に渡って0歳から18歳の子どもを育てることになる。もし末子と長子の出産間隔が12年になれば、4人の子どもがすべて19歳以下である期間は6年間に過ぎないのである【注2-6】。