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5. マスターズ水泳におけるバタフライ

 

(財)日本水泳連盟医・科学委員会・科学技術部 筑波大学体育科学系教授  高橋 伍郎

筑波大学体育科学研究科  下山 好充

 

1) 1996年ジャパンマスターズ水泳大会

 

表1に1996年のジャパンマスターズ大会の参加人数と最高年齢者の年齢を示した。参加人数が最も多い種目は自由形で,バタフライが最も少ない種目であることがわかる。特に200mバタフライに関しては全ての年齢層において他種目に比べ,参加人数が少ない傾向が見られる。このことは他の種目と比べて参加の難しい種目ということができるが,逆に言えば,他の種目に比べ,参加さえすれば入賞(8位以内)あるいは優勝するチャンスが非常に大きい種目といえる。男子71歳,女子68歳が200mバタフライの最高年齢参加者で,この年齢の低さも他の種目と比べてバタフライの特色の一つである。

 

2) バタフライの特性

 

表2に1997年5月25日現在の競泳世界記録を示した。自由形・背泳ぎ・平泳ぎ種目ではそのほとんどが距離別に世界記録保持者が異なる傾向がみうけられる。しかし,バタフライに関して言えば,男子がD.パンクラートフ,女子がM.マーハーと2人とも100m,200m両方の世界記録保持者となっている。この現象はバタフライには距離のスペシャリストではなく,バタフライという種目のスペシャリストが存在することを示唆している。M.マーハーの最も古い世界記録の存在もその特色を示している。

また,現在の競泳世界記録において4泳法を速い順番にならべると,自由形,バタフライ,背泳ぎ,平泳ぎの順番になっており,バタフライは自由形に次いで速い種目である。しかし,マスターズ水泳の世界記録においては年齢や泳ぐレース距離によって必ずしも常にそのような傾向が見られるとは限らない。表3に1996年11月1日現在の年齢別マスターズ世界記録を示した。この表から分かるように45〜49歳まではおおよそ世界記録と同じ傾向を示しているが,50歳を越えると男子の200mにおいてバタフライが背泳ぎに抜かれるという逆転現象が起きている。さらに,75歳以上になるとついには平泳ぎにも逆転される傾向が見られる。このように,年齢別,レース距離別の記録をみることで,バタフライという種目は,年齢やレース距離によって他の種目と違う特色を持っていることが理解できる。

図1,2にバタフライの年齢別のマスターズ世界記録の変化を示した。縦軸に示したタイムは泳速と対応させるため各距離でスパンを調節した。つまり,縦軸は泳速と対応しても見ることができる。この図から,タイムつまり泳速が年齢に応じておおよそ指数関数的に落ちていく傾向を見ることができる。

また,図3,4にバタフライと自由形の加齢による泳速の減少を示した。泳速の減少を表すために縦軸は25歳の泳速を100%とした。この図によると,例えば,男子の50mにおいて泳速が50%になる年齢はバタフライではおおよそ80歳,自由形ではおおよそ90歳である。つまり,自由形よりもバタフライの方が加齢の減少率が大きいことがうかがえる。この傾向は性別やレース距離に関係なく見られる特徴である。

このようにバタフライは他の種目に比べて独自の特徴を持った泳法であることがわかる。これらの原因として,バタフライという種目がリカバリーを両手同時に空中で行なわなくてはならないといっ

 

 

 

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