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清水哲太郎の台本・演出・振付によるこの物語はペローの原作に基づいて展開され、時代をルイ14世の頃に設定して、「いかなる境遇にあっても、人を愛する優しい心」をテーマとしています。幼い頃のシンデレラと両親の愛情に満ちあふれたシーンをプロローグとして設け、「現状を素直に受け入れ、それを土台に強くけなげに生き抜こうとするシンデレラの、人々への愛情を決して忘れない美しい心」を描く伏線としています。3人の男性舞踏家が演じる義母とその姉妹の滑稽味がスパイスとなって、このバレエにユーモアと明るさをもたらし、魔法使いの老婆が《時の女王》に変わり美しい四季の精達が登場して、時のマジックに仕掛けられたシンデレラの人生に華やかな広がりと奥行きを与えています

 

プロローグ=幼い頃のシンデレラ

実の父母と無邪気にたわむれる幼いシンデレラ。誕生日のプレゼントのオルゴールに心をはずませる。

 

ACT1-1=シンデレラの家

両親を亡くし義理母とその娘姉妹と暮らすシンデレラは、どんなに仕事を言いつけられても明るく働き、いつも両親の形見のオルゴールに話しかけている。ある時大切なオルゴールを義理母にすてられてしまうが、老婆が現れ、心優しいシンデレラにオルゴールを渡して去って行く。その時、宮廷からの使いが王子のお妃選びの舞踏会の招待状を持ってやって来る。義理母と姉妹は、宮廷作法の先生からにわか仕込みで作法を学び、ダンスのレッスンをする。そして盛装して大騒ぎで城へと出発する。一人残されたシンデレラは、オルゴールをくれた両親と共に出席したつもりで、すばらしい舞踏会を想像しておどりだす。するとまた老婆が現れ、シンデレラの望みをかなえようと杖を振る。

ACT1-2=四季の泉

老婆は時の女王に変わる。四季の精に迎えられたシンデレラは、カボチャ、ハツカネズミ、トカゲ、大ネズミを探し出すようにいわれる。全てを探し出したシンデレラは精達の魔法で変身する。美しいガラスの靴、輝くばかりのドレス、六頭立ての金色の馬車。御者や従者を従えて、12時までに帰る約束をして、高鳴る胸をおさえて城へ急ぐ。

 

ACT2=宮廷の大広間

宮廷の大広間では、世界中からのお客と王子の花嫁候補の令嬢達が招かれている。侯爵、伯爵ならびに夫人と令嬢達、王立舞踏アカデミーの踊り手、そして王子の友人達が集う中に、場違いな義理母と姉妹達も大広間に入ってくる。人々が宮廷舞踏を踊る中へ王子が突然現れる。いよいよ王子が花嫁を選ぶ時間になったその時、宮廷中は妙なる調べにつつまれる。シンデレラが皆の前に現れると、あまりの美しさに人々は息をのむ。義母と姉妹もどこかの国の女王様かと思い込む。心を奪われた王子はダンスを申し込む。人々は二人を祝福して乾杯する。宮廷から贈られたオレンジを持ち人々は狂喜して踊る。シンデレラと王子のパ・ド・ドゥに舞踏会は一段と盛り上がり、人々はワルツの曲にのり大広間を輪舞する。その時、12時を告げる鐘が鳴り始める。人々は仮装の人たちの演技に拍手をおくり、踊りに酔いしれる。その最中にシンデレラは王子のもとから逃げる。王子はあわてて後を追う。王子は残されたガラスの靴に茫然と立ちすくむ。

 

ACT3-1=城門

真夜中過ぎ、宮廷ではガラスの靴の持ち主を探すために隊がくまれる。うわさを聞きつけた令嬢達や娘達が靴を合わせてみるが、合う者はいない。一行はガラスの靴をかかげ出発する。

 

ACT3-2=ジプシーの野営地

ジプシーの野営地を通りかかった王子の一行は、彼らに襲われガラスの靴を盗まれそうになるが、占いの老婆によって難を逃れる。あたりは一面大嵐となる。老婆は王子にガラスの靴の主への気持を確かめる。王子の決意の固いことを知った老婆は、四季の泉へ一行を案内する。

 

ACT3-3=四季の泉

一行が到着した泉では、美しい四季の精と、老婆から姿をもどした時の女王が出迎える。王子はガラスの靴の主への愛を誓う。精達は一行を主のもとへ導く。

 

ACT3-4=シンデレラの家

シンデレラは、オルゴールを相手に舞踏会の様子を語り出す。あまりにも幸福な時間がまたたくまに過ぎ、また、優しい王子を欺いたことに心が痛み、こらえきれずに涙ぐむ。義母と姉妹が宮廷から贈られたオレンジのことで喧嘩をはじめる。その時外が騒がしくなり、王子一行が到着してガラスの靴を合わせるように命ずる。姉妹我れ先にと合わせるが合わない。思いあまって姉妹の足の指を切ろうとする義母を、シンデレラは必死の思いで止める。その時、シンデレラのポケットからガラスの靴の片方が落ち、王子はシンデレラに靴を合わせる。靴はぴたりと合う。二人はじっと見つめ合う。

 

ACT3-5=シンデレラと王子のパ・ド・ドゥ

王子とシンデレラは再会を喜び、愛を確かめ合い踊る。

 

エピローグ=大聖堂

二人の美しいパ・パ・ドゥが終わると、舞台は大聖堂となり、結婚式がおごそかにとり行われる。優しいシンデレラは義母や姉妹の全てを許し、これからもみんなで幸せに暮らせるように王子に頼む。時の女王や四季の精、大勢の人々に見守られる中、二人は枢機卿の前で永遠の愛を誓い合う。

 

 

 

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