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(4) その他

 

最後に、以上の区分には含めえない事例として、市民の居住・移転の自由と地方の法令がぶつかった例であるが、一定の地域に定住のために移住してきた市民の登録手続を規制するモスクワ市、モスクワ州、スタヴロポリ地方、ヴォロネジ州およびヴォロネジ市の一連の法令の合憲性が問われた事件(1996.4.4)を取り上げたい(『憲法裁』96-2)。

事実は以下のとおりである。まず、スタヴロポリ地方では、臨時の規程ではあるが、カフカース・ミネラル・ヴォートの居住地域を永住地とすることは、特別の許可がある場合にだけ可能であり、しかもこの許可は毎年当該居住地域の住民の0.5%にあたる枠内で付与するとされた。

モスクワ州では、行政長官の処分により、モスクワ州に他の市から専門家を招請する権利に対する許可証の取得申請の審査手続が承認され、その料金が定められた(モスクワのベッドタウン地域の地区では3人以下の家族で900万ルーブル、それ以外の地区では600万ルーブル)。さらに、その支払が居住登録の前提とされた。

モスクワ市の場合は、「市のインフラ整備に関する市予算の支出の手当とモスクワ市に移住してくる市民の社会生活サービスの保障に対する税金についての法律」で、モスクワ市に移住してくるロシア市民は、その所有権を有する住宅地に対し最低賃金の月額の500倍の額の税金を支払うことを定め、モスクワ市における居住登録(登録)は、この法律の定める税金を払った市民に対してのみ行なわれるとした。モスクワ州も同様の措置を定めた。

いずれもが、憲法上の市民の権利・自由に対する重大な侵害であるとされた事件である。

スタヴロポリの場合は保養地の特殊性、モスクワの場合は大都市の人口・産業政策といった問題も考慮されなければならないが、こうした問題も憲法裁判所が地方の問題にかかわって審理しているという事実だけを指摘しておくにとどめたい。

 

4 むすび

 

以上、憲法裁判所の扱った事件をそれぞれ簡単に紹介してきた。二重構造をもつ自治管区の制度はロシアに特有の問題であるし、構成主体の選挙にからむ問題や地方自治の形成途上に発生する諸問題も、おそらくは過渡的な現象ではあろう。

ロシアでは、地方自治原則が認められるようになったのは91年のことであったが、その後長くその実現はモラトリアム状況におかれ、市場経済への移行にともなう混

 

 

 

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