イ 一層制か二層制か
新首都の地方制度として一層制を検討する場合、東京都あるいはかっての東京市が参考になる。
現行の地方自治法が制定された当時、一層制の地方公共団体として特別市制度があり、特別市の指定にあたって憲法95条の地方自治特別法として住民投票を行うこととされていた。その後、昭和31年に、今の政令指定都市制度ができ、特別市制度は実施されることなく廃止されたという経緯がある。
連邦制国家で、新首都をつくった場合、首都の地域は、各州から独立している必要があり、一層制ということになるが、我が国のような単一国家が新首都をつくるときは、我が国の首都制度の沿革などを吟味してみる必要がある。
現在の都道府県制度を前提として、新首都制度をどうするかの議論をする場合、新首都だけに一層制を適用する特別な理由があるかどうかが問題になる。
一層制とするか二層制にするかの判断の重要なポイントになるのは新首都の規模である。そこでは、新首都の区域を中心の国会都市の区域として考えるか、国会都市とクラスターの周辺都市までも含めて考えるかによって議論が違ってくる。
国会都市の区域に限定すると、人口10万人、面積2,000haとなるが、この程度の都市を一層制にして、府県並みの地位にすることは考えにくいのではないかという意見があった。
他方、新首都、国会都市と周辺のクラスターを含め60万都市とし、県と同格で県の管轄外となる一層制の地方自治制度を考えるのが適当ではないかという意見があった。一方これに対しては、それまで新首都を領域の一部としていた府県との十分な調整なくしては、府県との分離は難しいという意見もあった。