第8章 結びにかえて
第1節 成果の分析
重度障害者の社会参加を目的に発足したJoy Projectが残してきた数々の成果は、わずか3年という短い活動期間にもかかわらず非常に大きい。
障害者が社会参加をする上で障壁となっている法的規制に風穴をあけ、必要な道具の拡大をおこなってきた。
「運転席の脱着を認めた」
「電動車椅子を運転席として認めた」
「ジョイスティックコントロールという補助運転装置を認めた」
これらは、障害者を排除している社会の仕組みを変えたという、ハード面での変革であった。
「ジョイバン全国キャラバン」では全国を短期間で駆け回り、それぞれの地元の当事者や関係者に少なからぬ影響を与えてきた。『無理だ』と思われてきたことをわずかの時間で実現してしまったのである。しかも、当事者を中心とする小さな団体が。
これは、各地方の当事者に大きな影響を与えた『自分たちもやれば何かできるんじゃないか』といった気持ちを起こさせた。ソフト面での変革である。
もちろん関係諸機関へ今までの福祉とは違った発想で接してきたことも大きな影響を与えたであろう。
それらさまざまな成果が得られた最大の理由は、次の3つであると考えている。
?@Joy Projectが当事者中心であること
?AJoy Projectが非営利市民団体であること
?BJoy Projectが福祉という枠を超えて活動していること
もちろん代表の渡邊啓二のキャラクターやスタッフ1人1人の資質も重要であったかも知れない。しかし、Joy Projectのスタッフが特別な力を持っているからできたのではなく、条件がそろえば誰でもできたことをたまたまJoy Projectが実践しただけのことである。気付いたことをそのままにせず、実行できる力があったということである。
法的規制に風穴を空けることも、健常者の団体や営利目的の企業が運輸省へ交渉に行っても成果は得られなかったであろう。本来なら専門家と言われる社会的に影響力を持っている人たちが率先しておこなうべき事業内容である。障害者を取り巻く専門家といわれる人たちは数多くいる。しかし、障害者が社会的に一人前と認められていない現状を真剣に問題として取り上げ変革していこうと行動する人は希である。
どこの馬の骨かもわからないような市民団体の障害者が運輸省や警察庁を訪問し全く新しい交通システムについて説明することなど、おそらく担当者には初めてのことで戸惑いはあっただろう。
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