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第4節 右側リフトに関する考察

 

キャラバン会場で参加者から「右側リフトは車道側にでることになるので危険ではないか」という意見が相次いだ。また、「自宅の車庫が広くないのでリフトが駐車場でリフトが降ろせない」という話も耳にした。
右側にリフトが出ることは危険なのだろうか。すでに免許を所有している障害者が運転席に座るときには、運転席ドアーを目一杯開けて乗り込むケースがほとんどである。車の往来が激しい通りでも、横をビュンビュンと車がものすごいスピードで走っていくすぐ脇でこの動作は行われる。健常者だって、運転席の乗り降りは右ハンドルである以上右側である。こういった動作が危険だというなら右側リフトも当然危険という考えに行き着くのはわかる。しかし、これらのすでに免許を持って車に乗っている障害者の現状などを棚に上げてリフトだけが危険というのは解せない。免許を持っている人が運転する以上は、安全確認をして乗降することになっている。自己責任のもと誰もが危険を認識しながら車を使用しているではないか。障害者であるからというだけで常に保護され続ける理由はない。
仮に左側リフトを想定すると、道路の左側にぴったり寄せて駐車するとガードレールのない一部の歩道などを除けば、当然リフトを降ろすスペースはない。狭い道でリフトを降ろそうとすると逆に道路の右側対向車線に車を止めなければならなくなる。これこそ危険ではないだろうか。
もう一つ、後ろリフトの提案もあった。後ろリフトは駐車時の乗り降りは確かに他の交通に対して影響は少ない。しかも、狭い駐車スペースでは有効である。しかし、車両の室内を後ろから運転席まで通路にしなければならない。ということは本来座席があるところを通路にするわけで乗車定員が少なくなってしまう。これでは「走る廊下」になってしまう。
われわれとしても右側リフトが最高の状態とは思っていない。左側リフト、後ろリフトそれぞれに一長一短がある。
一般的に車の購入をするときには、その目的にあわせてさまざまの種類が用意されている。家族が多いユーザーには1BOX、レジャー使用が多いユーザーにはRV、買い物等が主な使用目的なら軽自動車というふうに。全国キャラバンではジョイスティックコントロールカーのこういったバリエーションを見せることができなかった。そのため、参加者の中に『ジョイスティックコントロールカー=右リフト、左ハンドル、大きい車=日本では使いにくい』と思いこむ図式ができてしまったようである。
人それぞれの生活スタイル、生活地域の環境等条件が異なるので必要とする車のイメージは異なる。キャラバン参加者の中にはややもすると「JOY−VAN」の評論ばかりをする感じの人も見受けられたが、大切なことはメーカーも含めて社会全体に自分たちの必要な車をアピールしていくことである。その中でさまざまなバリエーションを持ったジョイスティックコントロールカーが現れるとわれわれは信じている。
右側リフト、左ハンドル、車の大きさは本来ユーザーの選択肢の1つでしかない。だが、現在の日本の国民性からして自分が本当に必要なものを「必要だ」と声をあげられる障害者はどうやらまだまだ少数派のようであった。

 

 

 

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