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障害者が社会参加する上での大きな障壁の1つは移動手段である。特に重度障害者の場合、電動車椅子という短距離の移動手段はあっても、長距離の移動手段は十分ではない。都会では公共交通機関も車椅子で利用可能になってきたが、階段の昇降など時として非常に危険が伴うし、公共交通機関が発達していない地域では車椅子の行動半径がそのまま生活行動半径になっている。移送サービスも地域格差が大きく、利用者増加により慢性的な運転手不足を抱えている地域があるかと思えば、利用者の少ない地域もある。また、法的整備がされていない点を問題視している声も聞こえてくる。
将来的にはすべての重度障害者が公共交通機関の整備や移送サービスだけで移動の自由が保障されるとは思えない。
重度の障害者の移動を保障できる道具やシステムはないのだろうか。
重度の障害者に関わらず障害者の社会参加を阻む障壁が人為的なものであるなら、積極的にそれを取り除かねばならない。例えば、重度の障害者が社会参加できるテクノロジーがあるにも関わらずそれを認めないとする考え方があるのならば、それは改めなければならない。
ジョイスティックコントロールカーはまさにその代表格であった。アメリカや北欧諸国ではあたりまえのように街を走り重度の障害者の移動の保障をしている。日本ではまだ法的規制があって走ることができなかった。
もし、このような道具を手に入れられるようになったらどうであろうか。今まで移動手段が無く施設や自宅にとどまっていた人たちが社会参加できるようになる。移動手段だけが必要なのではなく、社会的環境整備全般も必要であることは言うまでもないが、移動手段が保障されることによる当事者の生活の変化、そして周辺環境への波及効果が大きいことは八王子の当事者運動の歴史でわれわれは学んでいる。
ジョイスティックコントロールカーは、重度の障害者が社会参加を保障するのに必要な道具である。また、結果的にそこから波及するさまざまな効果が日本の社会構造や意識構造を変えていけるパワーになるとも考えられたのである。

 

第2節 ジョイスティックヘのこだわり

 

Joy Projectが発足し活動を始める初期段階でスタッフ内にもジョイスティックコントロール装置に対しての意見の相違があった。
電動車椅子のまま乗り込み運転ができれば、十分法的規制に穴をあけたことになり、成果は大きいという意見である。つまり、電動車椅子を座席として使用することを認めさせた後に、第2段階としてジョイスティックコントロール装置の認可の活動を展開しようという考えである。
確かにジョイスティックコントロール装置まで必要な人は三肢麻痺が中心となり数的には少ないかもしれない。高位の頚髄損傷者などでもハンドコントロールと省力ステアリングで十分運転は可能となる。車椅子から座席に乗り移る動作が無くなることで移動の手段が確保される人の方が数的には圧倒的に多いだろう。

 

 

 

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