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その内容は、?@運転席の脱着を認めた。?A電動車椅子を運転席として認めた。?Bジョイスティックコントロールドライブシステムを補助運転装置として認めた。以上の3点である。ただしアナフィールド社製のオートラッチロックは、そのままでは認められなかったために、Joy Projectが左右のぶれ防止装置と、持ち上がりを防止するストッパーを追加製作し、やっと認可を得られた。シートベルトやヘッドレスト等未解決の問題は数限りなく存在している。たとえば、運転席以外への車椅子の固定は認められていない。『JOY−VAN』は「車椅子使用の障害者自身が運転するパーソナルカーだから認可した。車椅子移送車両としての登録(8ナンバー)であれば、車道側にリフトが出ることを認めることはできない」という運輸省の現行見解の結果である。
したがって残念ながらわが国では、折角の『新システム車』が、夫婦共に車椅子使用の全身性重度障害者にとって現実の生活には役立たない『道具』になってしまったのである。
全国キャラバンは、当初10ヶ所の予定でスタートしたが、全国から強い要請を受け、公式42ヶ所、実質53ヶ所となった。
年間を通して全国的にイベントを開催するという初めての体験に、当初事務局にも大きな戸惑いがあった。しかしイベント会社の協力の下、事務局として実施要領を会得するのに多くの時間を必要とはしなかった。大幅に開催予定地が増加するにつけ、事務局独自の裁量で実施する方向へと転換した。
限られた人材の中で全国キャラバンをやり通せたのは、日本財団の強力な支援はもとより、各地区整備会社の人的協力や、当事者の熱い期待と協カによるものと感謝している。

 

総括

 

全国キャラバンを実施して、多くの当事者の生の声を聞く事ができた。その中で出てきた問題を、今後の課題をも含め以下に列記する。
?@価格が高すぎて手が届かない。
全身性重度障害を持つ多くの人達の生活状況は、親や兄弟の扶養下にあるか、施設に入居しているか、基礎年金をべースにつましい暮らしをしているか、生活保護を受けているか。中途障害者の中には交通事故後遺症や労働災害後遺症等、その発症原因によつては一定の経済的基盤を持つ人たちも存在するが、全体の中では多数を占めるとは言いがたい現状がある。多くの会場で、『夢』と『希望』に満ちた歓喜の声がわき上がるのと同時に、落胆の声も聞かれたのは無理からぬ事と思わせられた。
参加者の意見を総合的に要約すると「最先端テクノロジーを駆使したJoyProjectの『車』が、現在わが国で製造販売されている『介助型福祉車輌』の価格と比較して決して高くない、との論理的比較認識はできるが、現実に買えなければ単なる『夢』でしかない。」との結論になる。

 

 

 

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