Joy-VAN全国キャラバン(地域生活の新たな支援システムの研究)
報告書
基本的な考え方
過去、福祉は保護することがその主たる役割だと考えられてきた。しかし大多数の当事者は決して保護されることを望んではいない。世界的に自立運動の波が大きくうねり出したのが約30年前である。日本でもやっと10年前から当事者の主体的な動きが世の中に影響を与えるようになり始めた。しかし日本の社会は欧米に比較して対応が大きく遅れている。その原因は長年に渡る「保護主義」と「施し福祉」の考え方が、結果として「特殊な国民」としての障害者像を多くの国民の潜在意識下に定着させているためだと考えられる。
たとえどのような状況にある人でも(障害者であれ高齢者であれ女性であれ)一人一人が自分らしく、あたりまえの人間として社会との関わりを持ち続けられることこそが人生であり、このことを保障するために法的な裏付けと様々な支援システムが必要なのだと考える。しかるに現状は、多くの法律が主権者たる障害当事者の社会参加を阻んでいるのである。このことは、主権在民を明記する法治国家たる日本に於いて由々しき一大事のはずである。福祉先進諸国においても、かつては同じような状況にあった。しかし当事者及びその関係者、専門家達の問題提起と働きかけに速やかに対応し、短時間で大きく変革を遂げている。わが国における反応と対応の鈍さは、そのまま彼我の民主国家としての成熟度の差に他ならない。
このようなわが国における国民的意識構造に変革をもたらすためには、私たち当事者自身が社会貢献の視点を持って社会に働きかける活動こそが今最も必要とされていると考えられる。
従ってJOY−VAN全国キャラバンは、単に障害者のための特殊な車として取り組んでいるわけではない。社会参加を保障する上で障壁となっている法律があるのなら、当事者自身が積極的に働きかけ、障壁を取り除かなければならないし、そのことを実践を通して伝えていかなければならない。
来るべき超高齢社会における多くの課題も、実は私たち障害を持つ当事者が抱える問題と共通する課題が大きい。だからこそ私たち障害を持つ当事者市民の体験が大いに役立つと確信している。
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