■事業の内容
わが国は、国際社会における責任を果たすため、開発途上国に対する経済・技術協力の拡充を積極的に促進しており、海上保安の分野において海難救助、水路、航路標識等の関係業務で逐次実績を積み重ねてきているが、今後さらに充実を図るためには、事前に開発途上国の現状及び要望を把握し、基礎資料の充実を図る必要がある。 特に最近、地球環境問題が世界的に大きな関心を呼び、環境分野での協力が課題となっているため、海上防災、海洋汚染防止等の海上保安の分野における開発途上国の現状を把握し、今後の協力に役立てることが必要と資料される。さらに新海洋法秩序の形成、SAR条約の発効等、海上保安の分野における国際協力のフレームワーク造りが活発化してきており、先進国、開発途上国を問わず、世界の関係諸国との情報交換、相互協力の重要性が高まっている。こうした世界的情勢に的確に対応するためには、わが国の海上保安業務を広く海外に周知するとともに、国内的にも理解を得る必要がある。これらの状況を踏まえ、次の諸事業を実施した。 (1) 国際関係経済協力基礎調査 [1] 調査対象国及び日程 インド 11月3日〜11月9日 タ イ 11月10日〜11月16日 [2] 調査内容 海上保安業務を担当する国家機関の組織、体制及び装備 海上警備及び海難救助の体制、海上交通安全確保 海上災害防止、航路標識の維持運用、水路業務、教育訓練等 [3] 訪問先(訪問順) インド 灯台灯船局、コーストガード(巡視船を含む)、海軍水路局、運輸省船舶局、UTTAN灯台 タ イ 警察局海上警察隊、交通通信省港務局、交通通信省航空局 [4] 調査員 1名 [5] 調査報告書 A−4判 120頁 200部 [6] 配布先 海上保安庁及びその出先機関並びに他の関係機関 (2) 海上保安に関する国内外の情報提供 [1] 規 格 B−5判 60頁×2回 [2] 部 数 各500部 [3] 内 容 内外の海上保安業務関係資料及び情報 [4] 配布先 海上保安庁及びその出先機関並びに内外の関係者 (3) 先進諸国海上保安体制調査 [1] 調査対象国及び日程 ノルウェー 9月24日〜9月28日 オランダ 9月29日〜10月4日 [2] 調査内容 海上保安体制維持、特に海洋環境保護及び汚染防除体制 その他海難救助の体制、航行安全、水路、航路標識業務等 [3] 訪問先(訪問順) ノルウェー コーストガード、海難救助協会、オスロー港、国家汚染管理局 オランダ 船舶交通局、海軍水路部、沿岸警備センター [4] 調査員 1名 [5] 調査報告 A−4判 80頁 200部 [6] 配布先 海上保安庁及びその出先機関並びに他の関係者 (4) 海上保安白書英語版の作成 [1] 規 格 A−4判 100頁 [2] 部 数 500部 [3] 内 容 海上保安白書の中から国際的に周知すべき内容を英訳したもの [4] 配布先 海上保安庁、その出先機関、大使館等在日外国機関を含む内外の関係者、及び在外の関係機関
(5) 海外の海上保安事情に関する講演会の開催 [1] 形 式 講演会及び意見交換の開催 鹿児島地区 平成8年11月19日 海上保安庁 南九州地方本部 那覇地区 平成8年12月17日 海上保安庁 沖縄地方本部 [2] 講 師 鹿児島地区 2名 沖縄地区 2名 [3] 聴講者 管内の海上保安関係者 [4] 報告書 a.規 格 A−4判 30頁 b.数 量 730部 c.配布先 海上保安庁及びその出先機関等
■事業の成果
(1) 国際関係経済協力基礎調査 開発途上国に対する経済・技術協力の量的、質的な拡充を図ることが国際的に要請されており、海上保安分野においても、海難救助、海洋汚染防止、水路、航路標識関係等について、逐次実績を積み重ねてきているが、今後さらに国際協力の充実を図るためには、事前に開発途上国の現状及び要望を把握し、基礎資料を作成するための現地調査を行い、国際協力を効率的に進める必要がある。 本事業においては、これらの現状を踏まえ、海上保安庁の指導のもとにインド及びタイに調査員を派遣し、両国の関係者にわが国の海上保安業務の現状を紹介するとともに、直接に情報交換を行ったほか、関係施設、巡視船等の現地調査を行い、貴重な資料を入手することができたことは、極めて有意義であった。これらの調査結果は、報告書として取りまとめるとともに、本地業で実施している定期刊行物(コンパス31号)にも掲載し、海上保安機関その他関係者に配布し周知した。これらは、今後の国際協力の推進に大きく寄与するものと思料される。 (2) 海上保安に関する国内外の情報提供 最近におけるわが国の海上保安業務の国際化に対し、円滑な業務の推進を図るため、内外の海上保安関係資料及び情報を取りまとめた定期刊行物を年2回作成し、海上保安庁の第一線で国際的事案の処理に当たっている巡視船艇を含めた全部署及びその他の関係者に配布した。このことは、国際的な情報誌として、現下の海上保安業務の遂行に大きく寄与するものと思料される。 (3) 先進諸国海上保安体制調査 最近におけるわが国の海上保安業務は急激に国際化しつつあるが、特に平成8年7月20日、国連海洋法条約へのわが国の加入が効力を生じ、海洋管轄権が飛躍的に拡大した新しい海洋秩序法制に現実に対応することとなった。SAR体制の推進、全世界的な海洋環境保護対策等と併せ、こうした国際的な枠組みを実効あるものとするためには、海上保安分野における先進諸国との協力・協調体制の一層の強化が必要である。 本事業においては、これらの現状を踏まえ、海上保安庁の指導のもとにノルウェー及びオランダに調査員を派遣し、両国の海上保安関係機関の組織、体制、業務の実施状況等の現地調査を行うとともに、関係者と直接に情報を交換したほか、貴重な資料を入手した。上記の目的に照らし、極めて有意義な現地調査であった。 これらの調査結果は、報告書として取りまとめるとともに、本事業で実施している定期刊行物(コンパス31号)にも掲載し、海上保安機関その他関係者に配布し周知した。これらは、今後の国際協力の推進に大きく寄与するものと思料される。
(4) 海上保安白書英語版の作成 海上保安業務は、それ自体が国際的であり、したがって海上保安白書の内容で国際的でないものはほとんどないといっても過言ではない。海上保安白書英語版はこれらの中でも特に国際的に周知すべき内容を英訳したものである。これらは、国際的な現場で活躍する海上保安官にとって非常に力強い資料であるとともに、関係外国機関にわが国の海上保安業務の現状を紹介し、様々な場面において海上保安業務の各分野における国際的な情報交換のための極めて有益な資料となるものである。
(5) 海外の海上保安事情に関する講演会の開催 訪日する諸外国の海上保安関係者、在京の海上保安関係アタッシュ等を講師として海外の海上保安事情に関する講演会を開催することにより、関係諸国の海上保安体制の把握に役立つほか、外国船舶への対応並びに諸外国の海上保安機関との接触の機会が増加している海上保安庁職員の国際感覚の涵養と、外国の海上保安関係者との相互理解が図られたことを確信する。 平成8年度は、当協会の南九州地方本部が鹿児島地区(平成8年11月19日)、沖縄地方本部が沖縄地区(平成8年12月17日)において開催した。
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