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■事業の内容

平成7年5月に発効した「1990年に油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約(OPRC条約)」第6条に規定されている、油による汚染に係る準備及び対応のための国家的な緊急時計画においては、流出油防除活動を迅速かつ的確に行うための判断材料とするための、沿岸域における環境保護優先度を考慮したマップの整備が進められている。
 平成5年度に、当協会は「沿岸域のセンシティビティ・マップに関する調査研究」を実施し、わが国の実情に即した形での同マップの整備に早急に行う必要があるとの結論を得た。
 このため平成7年度には、そのモデルケースとして、東京湾沿岸海域の自然環境及び社会的・経済的利用状況に関する情報を広く収集し、同沿岸海域における環境保全リスク情報マップの普及版を作成するとともに、関係利用者の意見を取り入れ、有効なマップの作成と普及の促進を行った。さらに、コンピューター処理することにより、より多くの情報を収容し、迅速に提供するための地理情報システム(GIS)の手法を用いて、同マップの電子地図化の検討を行った。
 今年度はその対象沿岸海域を伊勢湾とし、昨年度と同様に環境保全リスク情報マップの普及版を作成することにより、併せて同マップの電子地図化の検討を行い、もって同マップの整備・普及の促進を行うことを目的として実施した。
(1) 調査の方法
  運輸省運輸政策局環境・海洋課海洋室の指導のもと、油除去関係者等の協力を得て行った。また、伊勢湾における油防除関係者を対象にワークショップを開催し、広く意見を聴取した。
  伊勢湾における基礎データの収集は、(社)日本海事検定協会名古屋支部に委託し、これらのデータの整理・分類、編集を行った。
  普及版マップ及びデータブックの印刷、製本については、専門業者である内外地図(株)に委託した。

(2) 調査の項目及び内容
 [1] 伊勢湾沿岸域における環境保全リスク情報マップ作成のための基礎データ収集及び普及版マップの作成
  a.海岸線形態に関する基礎データの収集
  b.生物相・生物資源生産に関する基礎データの収集
  c.社会・経済活動に関する基礎データの収集
  d.普及版マップ(紙マップ)及び付録データブックの作成
 [2] 同マップの整備・普及の促進に係るワークショップの開催
   伊勢湾沿岸域における環境保全リスク情報マップのユーザーとなるべく、地域関係者を対象に、同マップの整備・普及の促進に係るワークショップを開催し、広く意見・要望等を集めた。
  a.開催場所:名古屋、1回
  b.対象者等:運輸省、海上保安庁、海上災害防止センター、地方自治体防災担当者、船社、石油関係会社、漁業関係者、海上防災事業等(約60名)
 [3] 地理情報システム(GIS)を利用した同マップの電子地図化の検討等
   GISを用いた伊勢湾沿岸域における環境保全リスク情報マップの電子図化の検討を行った。
 [4] 報告書等の作成
  a.題名
   (a) 伊勢湾沿岸域環境保全リスク情報マップ
   (b) 伊勢湾沿岸域環境保全リスク情報マップ付録データブック
   沿岸域環境保全リスク情報マップ整備の促進調査報告書
  b.規格
   (a) A1版 1/50,000 カラー地図3枚組
   (b) A4版 200頁  
   (c) A4版 150頁
  c.数量
   (a) 100セット
   (b) 100部
   (c) 100部
  d.内容
   (a) 伊勢湾沿岸域の自然環境及び社会的・経済的利用状況に関する情報収集に基づき作成した環境保全リスク情報マップ(普及版紙マップ)
   (b) 同マップ付録のデータブック
   (c) 本年度調査に関する包括的な報告書0
■事業の成果

本事業は、1994年(平成6年)に実施した基礎調査をもとに、実用面での検討を進めるため、伊勢湾を対象園学域とした「沿岸域環境保全リスク情報マップ」を試作するとともに、同情報図の利便性の向上を目指し、コンピューター化についての基礎調査を実施したものである。
 1995年(平成7年)5月のOPRC条約の発効を契機として、センシティビティ・マップの整備・普及が世界的にも勧められている中、わが国初のセンシティビティ・マップの試作などを目的とした本事業はまさに時宜を得たものであった。
 また、今般日本海で発生したナホトカ号による大規模流出油事故により、油防除問題に対する国民の関心が高まる中、「伊勢湾沿岸域環境保全情報マップワークショップ」には多数の防災関係者が集まり、わが国におけるセンシティビティ・マップのあり方などについては、幅広い意見の交換が行われた。
 同ワークショップの開催については、報道機関でも大きく取り上げられ、わが国におけるセンシティビティ・マップの整備・普及の促進に対する世論の期待と関心の高さを伺い知ることができた。
 今後はワークショップで得た成果などを本事業に積極的に反映させ、より有効な積極的なセンシティビティ・マップの整備・普及方法のあり方を探ることなどにより、わが国での整備・普及の促進に貢献できるものと期待できる。





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