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■事業の内容

(1) 目 的
  けん銃などの銃器の危険性、反社会性等についての国民の意識を高め銃器情報の積極的な提供を促すため、若者を主対象として広報活動を積極的に行い、けん銃のない安全な社会づくりに努めることを目的とする。
(2) 内 容
  過去の警察での検挙事例をもとに「けん銃を拾った予備校生」「銀行強盗の被害にあった女子高生」「モデルガンを集めている高校生」を内容とするコミックでわかりやすく解説した冊子「NO GUNS!」(恐怖のけん銃)157,500部を編集発行して、各都道府県防犯協会連合会に配布し、若者を中心に広く配布させようとするものである。
 [1] 「けん銃を拾った予備校生」
   「けん銃発砲事件の増加」及び「銃器の被害者となる一般市民の増加」の事例として、主人公の予備校生が、偶然に街中の公園でけん銃を拾ってしまった。
   この予備校生は、不良の先輩に恐喝されていて、それに応じないでいると兄弟が脅かされたりするのに耐えられなくなり、思い余って拾ったけん銃で復讐しようとする。が、その途中でけん銃を紛失してしまう。予備校生は、犯罪者にならずに済んだが、その直後に発砲事件が発生するという、一般市民がいつ、どこでけん銃発砲事件に巻き込まれるかもしれないし、分からないという事例の内容。
 [2] 「銀行強盗の被害にあった女子高生」
   「銃器をめぐる規制」の事例として、父の転勤でアメリカで3年間生活し、日本に帰国した主人公の女子高生とその友人の周辺で起きる2件のけん銃発砲事件を題材にしている。その事案の一つは、けん銃を使用した銀行強盗事件に巻き込まれ、女子高生の一人が、一時的に人質となる被害を受けるものの無事に解決する。といった事例で、これらは、日米のけん銃規制、銃器管理の違いやけん銃に対する抵抗感の違いを表現し、日本の米国社会への類似化を警告している事例の内容。
 [3] 「モデルガンを集めている高校生」
   「けん銃使用犯罪の市民社会への拡散」と「けん銃保持の自首減免の制度」の事例。主人公は、高校1年生の男子で2度のホームステイで実弾発射の経験があってモデルガンの収集を趣味としている。この高校生が、街中で出会った暴力団に恐喝され、数回にわたり脅かされるうちに、交換条件にけん銃を要求する。一方、父親は息子の様子がおかしいのに気付き、けん銃を引き渡される場面を目撃する。けん銃を手に入れた高校生は嬉しくてしょうがないが、父親に諭されて自分からけん銃の保持を警察に通報するといった事例の内容。


■事業の成果

我が国の治安が良好な状態で維持され、市民生活が安全かつ平穏に営まれている大きな理由として、けん銃をはじめとする銃器に対する厳格な規制が行われ、これらを使用した凶悪な犯罪の発生が防止されてきたことが挙げられる。しかし、近年、ラッシュ時の駅構内における医師射殺事件、住友銀行名古屋支店長射殺事件、スーパーマーケット事務所内における女子高校生等射殺事件及び銃器発砲に伴う強盗事件などけん銃が一般社会に向けられた凶悪な事件が相次いで発生した。

 また、平成7年のけん銃の摘発数は過去最高となったが、特に、暴力団関係以外の者からの摘発が急増しており、けん銃の拡散が一般市民層にまで及んでいる。

 これらのことから、銃器根絶に向けて、けん銃等の銃器の危険性、反社会性等について市民の意識を高めていくことが、必要となった。

 そこで、過去の事例をもとに、[1]けん銃発砲事件の増加と銃器の被害者となる一般市民の増加[2]銃器をめぐる規制[3]けん銃使用犯罪の市民社会への拡散とけん銃保持の自首減免の制度について、漫画で分かりやすく解説した冊子「NO GUNS!」(恐怖のけん銃)を作成し、各都道府県防犯協会を通じて、中学生・高校生を主な対象として、学校、関係機関や全国地域安全運動県民大会等において配布した。
 高校生などからは、「銃社会などは遠い世界のことで、他人ごとだと思っていたが、実態を知ってよかった。」「銃社会の恐ろしい実態をだれもが知ってもらいたいと思っていたのでよかった。」「けん銃などの銃器は、特別な許可を受けた人以外は持てないこと。例え拾っても持ってはいけないことが分かった。」「アメリカは、銃社会だといわれていますが、日本でも、このまま放置するとアメリカみたいな銃社会になる恐れがあるので、どうにかしなければと思いました。」「一般市民を対象としたけん銃使用の犯罪が増えていますが、これは、けん銃が簡単に入手できるからだと思います。銃は危険なもの、持ってはいけないものであることを認識させることが必要だと思いました。」「若者にとって、けん銃を持つことは、格好がよいと思われがちですが、けん銃を持つことによって、加害者にもなり、被害者にもなるということをよく認識させるべきだと思いました。」といった感想が寄せられるなど、早くも関心を高める成果が出ている。(なお、主として父兄や学校教師の間からは、コミックで関心を高めた後での、末尾の資料編が銃器問題を考えていく上で大変参考になった、の声をも聞くことができた。)こうした中で、都道府県防犯協会から追加配布の要望もあった。
 これらのことから、けん銃などの銃器の危険性、反社会性等について、若者を主対象とした国民の意識を高め、銃器情報の積極的な提供を促すなど、けん銃のない安全な社会づくりに努めることとした所期の目的を概ね達成することができた。





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