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■事業の内容

(1) アジア・アフリカ等におけるらい対策研究及び援助
 [1] 技術者研修
  a.海外技術者研修
   (a) フェローシップ(45名)
   (b) スカラーシップ(26名)
  b.海外専門家技術者研修
   (a) バングラデシュ国内セミナー(90名)
   (b) インドネシア国内セミナー(61名) 
   (c) 中国国内セミナー(2,994名)
   (d) ブラジル国内セミナー(6,180名)
   (e) ミクロネシア国内セミナー(317名)
  c.専門家技術者研修(国際医療協力研修)
   (a) 国際保健協力フィールドワーク・フェローシップ(14名)
  d.らいに関する教材の開発及び供与
   (a) An Atlas of Leprosy (英語)2,500部
   (b)     〃     (スペイン語)400部
   (c) 蛇腹折らい図鑑ポケットアルバム 7,000部
 [2] 現地技術協力
  a.専門家の派遣
   (a) 対象国  ネパール、タイ、中国、ミクロネシア
   (b) 派遣人員 9名
 [3] WHO、ILEP等らい関係諸期間との協議、連絡及び調整
  a.WHO、ILEP及び海外救らい団体等との協議、連絡  5回
  b.ILEP実行委員会の開催
   (a) 実施場所  イギリス
   (b) 開催内容  ・ILEP協同プロジェクトの協力状況報告及び今後の対策について検討
           ・MDT推進プロジェクトに関する国別状況担当団体からの報告
           ・世界のハンセン病の将来像に関する報告
           ・潜在患者の発見と治療に関する方策の検討
           ・SAPEL/LECプロジェクトに関するILEPプロジェクトの関連についての検証
   (c) 参加人数  71名
 [4] らいに関する基礎及び実地研究
  a.らいの化学療法に関する国際共同研究
   (a) 実施場所  タイ
   (b) 研究内容  ・PCR法によるらいの早期発見に関する研究
           ・オフロキサシンのらいに対する治療効果の研究
           ・アニマルハウスプロジェクトに伴う研究開発
  b.化学療法協同研究運営委員会の開催
   (a) 開催場所  タイ
   (b) 参加者   11名
 [5] 薬品機材供与
  a.アジア・アフリカ等に対する薬品・機材供与
   (a) 対象国   ブラジル、インド、中国、ミャンマー、ベトナム、ネパール、スーダン、ミクロネシア、エチオピア
   (b) 供与品目  治らい薬、研修用タイプライター、プロジェクター、研修用OHP、車輌等
 [6] らいに関する広報啓蒙活動
  a.パンフレットの作成  中国語版らいセルフケア小冊子  20,000部、その他
  b.教材の購入及び配布  International Journal of Leprosy  100冊、その他
 [7] MDT薬品供与体制の整備
  a.アドバイザーコミティーの運営(諮問委員会の開催)
   (a) 第1回  1996年6月 インドネシア
   (b) 第2回  1996年10月 東京
  b.供与対象国MDT評価調査
   (a) 派遣国  インド、中国、パプアニューギニア、インドネシア、ベトナム 
   (b) 派遣者  延べ6名
  c.対象国実務者による調査
   (a) 対象国  インドネシア、パプアニューギニア、ミクロネシア、ネパール
[8] らい根絶に対する世界会議
 a.開催日時  1996年10月11日
  b.開催場所  インド
  c.参加者   125名
(2) アジア・アフリカ等における寄生虫症対策研究及び援助
 [1] 技術者研究
  a.日中寄生虫予防研修
   (a) 研修場所  日本
   (b) 研修人員  11名 
  b.海外寄生虫技術者研修
   (a) 研修場所  タイ
   (b) 研修人員  10ヶ国 25名
 [2] 現地技術協力
  a.専門家の派遣
   (a) 対象国   ラオス、フィリピン、中国、タイ
   (b)派遣人員  11名   

■事業の成果

1991年にはWHO(世界保健機関)が「今世紀中に地球上かららいを制圧する」という目標を採択したのに呼応して、当財団ではより重点的ならい対策国際協力を推進し、今日ではこの目標達成が実現されうる状況までに至っている。これは、当財団の開設当時に世界のらい患者数は1,200万人以上と推計されていたが、昨今(1996年)のWHO発表の統計では予想をはるかに下回る94万人まで減少した実績が示している。
 本年度の「らい対策事業」では、WHOやILEP(世界救らい団体連合)と連携をとりながら、上記目標の実現に向って各国と協力しつつ諸活動を進め、積極的な事業展開を図った。近年MDT(らい複合療法)によってらいが完治することが証明され、当財団のらい対策事業の大半はその実施に集中され、その結果、上記推定患者のうち85万人がMDTの投与を受けられ、その率は実に90.3%に至っている。また、MDTの積極的支援は、らい蔓延国政府及び関連NGOのらい制圧活動に大きな励みとなり、MDTの拡大を加速する要因ともなっている。一昨年から日本財団の寄贈による治らい薬がWHOを通じてらい蔓延国に対し行き渡るようになってきたため、当財団はMDT未実施地域への拡大、末端保健所への治らい薬完全配布、そしてその実施状況の評価調査に至るまで積極的にWHO並びに各国政府をサポートした。更に、従来から実施しているらい蔓延国におけるMDT実施のための条件整備、即ち各国におけるMDT実施のための車輌その他機材の供与、入り用従事者に対する研修会の開催、そしてらい患者発見を促進させるための一般社会への啓発活動にも協力し、多方面から公衆衛生上の問題としてのらい制圧に向けて効果ある活動を行った。
 また、今年度は世界一の患者数をもつインドにおいて、らい蔓延国の保健大臣や担当局長を召集した「各国におけるアクションプログラム策定とその実行確認」のための国際会議開催に協力し、問題領域の明確かを図ると共に短長期的戦略の立案と社会の関心を喚起して、らい制圧の目標完遂に向けて大きな成果を上げた。併せて、らい対策を持続させるとの認識に基づき、将来の若手らい医療関係者育成のために、世界各地の研修地において実地研修の実施を積極的に支援し、参加者のみならず関連機関の関心を寄せる効果を上げ、将来のらい医療者拡充にも多大な貢献をしたものと自負している。
 「寄生虫症対策事業」においては、フィリピン、ラオス、中国などへ専門家を派遣し、各地の諸寄生虫症撲滅に大きな成果をもたらした。今年度は当財団設立時より継続してきた中央アフリカにおける技術協力が、現地側の政情不安から断念をせざるをえなかったが、これも現地住民はもとより現地政府や日本大使館からの強い要請を背景として、来年度は従来どおりの協力が実現できる見通しである。また、新規事業として実施した中国からの寄生虫分子生物学分野での専門家研修は、特にジュニア研修において優秀な若手研究科が来日し、長期にわたって分子生物学や遺伝子工学技術の収得、そして寄生虫学領域への応用等幅広い技術と知識の修得に努められた。そのため、本事業は今後の中国における分子寄生虫学の強化に大きく寄与するものとなり、延いては日中両国の協同研究への道を築く磯ともなる事業となった。
 以上、世界には未だに解決できない幾多の保健問題が残されているが、当財団の多岐にわたる継続的な協力活動によって、らいの制圧や地域に根ざした寄生虫症の撲滅等が解決の方向に着々と進み、世界の人々の保健衛生の向上に大きく寄与できたものと思われる。





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