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■事業の内容

本年度は、本事業3ヶ年計画の最終年度であり、ミラーサイクルの適用、超高圧過給の実現をはじめ、以下の項目を実現したとともに供試エンジンにおいて、最終目標出力率390を達成した。
 また、過去3年間の事業により得られたデータ、知見を基に重量/出力比2.9kg/PSとなる超軽量・大型高速エンジンのプロトタイプ機について詳細設計図を作成した。
 供試エンジン
  第2ステップ第2ステージ用
   型式     6L32FX
   シリンダ数       6
   シリンダ内径   320mm
   ストローク    360mm
 開発目標
   出力/シリンダ  950PS     (最大1045PS)
   平均有効圧力   29.5kgf/c平方メートル   (最大31.5kgf/c平方メートル)
   回転数      1000rpm   (最大1030rpm)
   平均ピストン測度 12.0m/s     (最大12.4m/s)
   出力率      354       (最大390)    
(1) 主要構造部検討
 [1] 吸排気システム
   サイクルシミュレーションの結果により、約6kgf/c平方メートルという従来の2倍以上の給気圧力が必要であることがわかったが、この給気圧力を達成するためには、1台の過給機だけでは対応困難であることから、低圧段側過給機と高圧段側過給機それぞれの給気圧力のバランスを考慮して過給機の型式を選定した。
 [2] ミラーサイクル
   サイクルシミュレーションの結果、ミラーサイクルを適用する場合、給気圧力を高くした方が、燃焼最高圧力や排気温度の低減効果が大きくなることがわかった。
   また、2段過給時の過給圧を想定すると現在の圧縮比のままでは問題があり、圧縮比を12以下にする必要があることがわかった。
   このため、圧縮比を変更した従来の13.6から11.9に低下させた。
   そこで、圧縮比を変更した場合のサイクルシミュレーション結果を基に、ミラーサイクル用吸気カムのプロファイルを決定した。
 [3] ピストン
   冷却性能の向上を目指すため、ピストンの冷却空洞について適当と考えられる3種類のモデル(形状)について、伝熱解析を実施した。
   この解析により最適と考えられたモデルを基に、冷却空洞の形状を変更した改良型ピストンを設計・製作した。
   この改良型ピストンについても静応力計測を行い、各部の応力が問題ないことを確認した。
   また、圧縮比を下げるために、ピストン頂面の外周部(ピストンのバルブ投げ凹凸部)をフラットにし、燃焼室の容積を増加させた。
 [4] 連接棒(ショットピーニング適用による疲労桿限up)
   疲労強度向上を目的として、連接棒本体(桿部)にショットピーニング施行を実施し、圧縮の残留応力を与えた。また、連接棒のネジ部についても疲労強度の向上を目的として、転造メネジ(従来の切削ではなく、塑性加工により製作することで強度を向上させたもの)を適用した。
 [5] 軸受
   油膜厚さの計算(シミュレーション)を行った結果、油膜厚さを増加するためには、潤滑油の温度を下げることが有効であると判明した。最終目的出力時のクランクピン部の最小油膜厚さは従来に比べ、約20%薄くなり、危険域に入ることが判明したため、潤滑油温度をエンジン入口で約10℃下げ、油膜厚さの減少を5%にとどめた。また、シリンダチッピの短縮を考えた場合、軸受幅を低減する必要があるが、軸受幅を低減する場合は、耐摩耗性、耐加重性能などに優れるリーレンラガー軸受などを採用する必要性が判明した。
 [6] シリンダヘツド
   現状用いられている片状黒鉛鋳鉄(FC)と強度と熱伝導率のバランスから候補材料と考えられるバーミキュラ鋳鉄(FCV)についての高温低サイクル疲労試験結果を基に、それぞれの材料を用いてシリンダヘツドのFEM解析による弾塑性解析を実施した。この結果、材質を片状黒鉛鋳鉄とするよりも、バーミキュラ鋳鉄とした方が、より高い負荷に耐えられることが判明した。また、プロトタイプエンジン用はシリンダピッチが短縮されるため、シリンダヘツドの幅も短縮する必要がある。このため、シリンダヘツドの幅を短縮し、吸排気ポートの配置を変更したシリンダヘツドを試作し、空気流動試験を実施した。この結果、吸排気ポートの変更により、シリンダヘツドの幅が短縮されたにも係わらず、同等の空気流量を確保していることを確認した。
 [7] 燃料噴射系
   従来の燃料噴射ポンプにおいて、目標出力時の最高噴射圧は1500kgf/c平方メートルを超えることが判明したため、燃料噴射ポンプの吐出圧力を1300kgf/c平方メートル以下にする条件について検討を行った。この場合、噴射系を拡大することで対応すると、従来のφ0.6mmをφ0.7mm程度にする必要性があることがわかったが、この場合は、噴口径が大きくなるため、スモークの悪化か懸念される。そこで、噴口径を変えずに噴射圧力を許容値以下とするため、噴口を上下2段(千鳥形状)として噴口数を増やした2段噴口型ノズルを製作した。また、噴口径がφ0.6mm×9穴の場合について検討したところ、燃料カムの最高速度を2.5m/s程度にする必要があることが判明した。
 [8] シリンダライナ(ファンアリング検討)
   ピストンのトップランド部への硬質カーボンの付着防止のため、ライナの上部にファイアリクを装着し、エンジン試験を実施した。この結果、トップランド相当部への硬質カーボンの堆積は明らかに少なく、潤滑油消費量も約40%減少し、有効性を確認した。また、耐摩耗性及び耐焼付性の向上を目的として、シリンダライナ内周辺にセラミック溶射を施工したライナを採用することとし、ライナに適する溶射皮膜を選定するために、摩耗試験及び熱衝撃試験などを実施し、最も良好であった皮膜を溶射したセラミック溶射ライナを製作した。更に、エンジン試験後のライナには、剥離などの異常は観察されず、問題の無いことを確認したが、長期的な経過観察が今後の課題と考えられる。また、従来の片状黒鉛鋳鉄一体品に対し、ライナ内周面側を従来と同じ片状黒鉛鋳鉄のままとし、ライナ外周面側をより高強度の球状黒鉛鋳鉄を用いて薄肉化したバイメタルライナを製作した。
(2) 構造解析
 [1] クランク軸(形状変更)
   プロトタイプエンジン用に、シリンダピッチ低減に対応したクランク軸について、形状変更の影響を確認するため3次元FEM解析を実施した。この結果、クランク軸各部に発生する応力は船級協会の許容応力以下であり、クランク軸については、シリンダピッチの縮小に適応が可能であることが判明した。また、ねじり振動についても計算を行い、問題の無いことを確認した。
 [2] ピストン(冷却室形状変更)
   冷却性能の向上を目指すため、ピストンの冷却空洞について適当と考えられる3種類のモデル(形状)について、伝熱解析を実施した。この解析により最適と考えられたモデルを基に、冷却空洞の形状を変更した改良型ピストンを設計・製作した。
 [3] 連接棒
   現状の連接棒大端の形状及びプロトタイプエンジン用に連接棒大端の肉厚を10%低減させた形状についてFEM解析を実施した。この結果、現状形状の連接棒には十分な余裕があることを確認するとともに、連接棒大端肉厚を低減させた形状についても問題のないことを確認した。また、静応力試験を実施し、得られた応力値について比較、検討を行ったところ、各部の応力は、FEM解析値と実測値が良く一致し、その値についても問題が無いことを確認した。
 [4] シリンダヘッド
   現状、用いられている片状黒鉛鋳鉄(FC)と強度と熱伝導率のバランスから候補材と考えられるバーミキュラ鋳鉄(FCV)について高温低サイクル疲労試験結果を基に、それぞれの材料を用いてシリンダヘッドのFEM解析による弾塑性解析を実施した。この結果、材質を片状黒鉛鋳鉄とするよりも、バーミキュラ鋳鉄とした方がより高い負荷に耐えられることが判明した。
 [5] クランクケース
   プロトタイプエンジンの軽量化及びコンパクト化には、クランクケースの形状、材質及び肉厚が大きく影響するため、シリンダピッチを短縮し、且つ、肉厚を低減したモデルについて、3次元FEM解析を実施した。この結果、代表的な寸法であるクランクケース外板の肉厚を現状25mmから20mmに低減可能なことが判明した。これにより、プロトタイプエンジン用クランクケース重量は、従来の17.3tから12.1tに軽量化できることが判明した。
 [6] 吸排気弁
   軽量化を目的としたチタン製吸気弁および熱負荷対策を目的としたナトリウム封入排気弁は、従来のものに比べて材質や構造が異なるため、FEM解析により応力評価を行い、安全性について検討を行った。この結果、どちらの場合も応力レベルは許容範囲内であり、問題のないことが判明した。
(3) 要素技術研究
 [1] 動バランス(最適バランス検討)
   プロトタイプエンジン(16V)について、慣性力が最小となる最適バランス率について検討を実施したこの結果、プロトタイプエンジンの水平方向の慣性力の方が重要と考えられるため、最適バランス率を117%とし、この値をプロトタイプエンジンに採用することとした。
 [2] 動弁系(動的解析)
   エンジンの高出力化及び高回転化に伴い、弁ばねの共振など動弁系の挙動に問題が生じる恐れがあるため、動的解析ソフト(DADS)を用いて動弁系シミュレーション(動的解析)を実施し、この結果を基に、弁ばねの選定を行った。解析結果の確認及び更なる精度向上のため、この弁ばねを含め、動弁系部品のエンジン運転時の挙動を計測した。この結果、シミュレーション結果と実測値がほぼ一致し、動弁系設計に有効であることを確認した。
 [3] シリンダライナ(セラミック溶射ライナ製作)
   耐摩耗性および耐焼付性の向上を目的として、シリンダライナ内周面の摺動部にセラミック溶射を施工したライナを採用することとした。シリンダライナに適する溶射皮膜を選定するために、ライナ材の表面に各種セラミック溶射を施した試験片を作成し、往復動摩擦試験機による摩擦試験及び熱衝撃試験を実施した。この結果を基に、最も良好な皮膜を溶射したセラミック溶射ライナを製作した。
 [4] 潤滑油流れの可視化
   エンジン運転時の軸受廻りの潤滑油の挙動(分布)を可視化する研究を行い、軸受形状の違いによる油膜形状の差異を確認した。この結果、動荷重下での油膜の挙動が確認され、油膜形状は、軸の潤滑油供給孔から円弧状に拡がること、及び軸受の油溝からは扇片に拡がることが判明した。また油膜形状は、軸受形状や回転数に依存し、回転数が高いほど鋭角的になることが判明した。
(4) 要素試験
 [1] 燃料噴射特性
   燃料噴射圧力を下げる目的で、噴口の数を増加させた2段噴口型の燃料噴弁ノズルを使用して運転を行ったが、スモークが明らかに悪化した。そのため、従来の燃料弁ノズルを使用して運転を行ったが、出力率354での燃料噴射圧力は約1450kgf/c平方メートルとなり、従来の許容レベル(実績レベル)である1300kgf/c平方メートルを超える結果となったが、燃料噴射ポンプの設計許容値である1500kgf/c平方メートル以下であることが判明した。実用化にあたっては、高噴射圧力に耐えられる燃料噴射ポンプの採用を検討する必要がある。燃料噴射弁の海兵時期及び燃料噴射圧力については、従来カムとミラーカムとで違いは見られなかった。
 [2] ピストン(静応力計測)
   出力率の増大に伴うピストンの温度上昇に対応するため、冷却空洞の形状を最適化し、冷却能力を向上させた改良型ピストンについて、静応力計測を実施した。この結果、最大応力の発生位置は従来型と同じくサポート部であり、応力値についても問題がないことが判明した。得られた応力値についてFEM解析と比較検討を行った結果、サポート部に若干の相違は見られるものの、FEM解析値と実測値は良く一致した。
 [3] 連接棒(静応力計測)
   連接棒について機械的荷重(爆発力、締付力、慣性力)が作用した場合の静応力計測を行った。この結果、最大応力が発生するのは、連接棒本体(桿部)で有り、応力値も許容内であることが判明した。また、FEM解析値と実測値は一致し、境界条件、荷重条件等の設定の妥当性が確認された。
 [4] クランクケース
   大出力化及び高回転化に伴い、クランクケースの振動が増加することが懸念されることから、機関振動及びクランクケースに発生する応力の計算を実施した。
 [5] 空気流動
   320mm試験エンジンのシリンダヘッドについて、空気流動試験装置を用いて、定常流空気流動試験を実施し、吸排気ポートと共に十分な空気流量を確保していることを確認した。また、プロトタイプエンジン用についてもシダピッチが短縮されるため、シリンダヘッドの幅も短縮する必要があり、吸排気ポートの配置を返還したことにより、シリンダヘッドの幅が短縮されたにもかかわらず、320mm試験エンジンと同等の空気流量を確保していることを確認した。
(5) 試験エンジン設計・製作
 [1] 2段過給用過給機
   出力率390を達成するために必要な空気量及び圧縮比について検討を行い、2段過給方式の必要性が確認されたことから、高圧段用の過給機と低圧段用の過給機の組合せ及び選定を行った。
 [2] 連接棒(ショットピーニング)
   連接棒本体の表面総に圧縮の残留応力を付加することにより、この部分に作用する引張成分の応力をきゃんせるし、疲労強度を向上させるため、連接棒本体に、ショットピーニング施行を行った連接棒を製作した。
 [3] シリンダヘッド
   シリンダヘッドの弾塑性解析結果より、材質が従来のFC300材よりもFCV400材の方が適することがわかったため、材質をFCV400に変更するとともに、水流試験結果をもとに冷却空洞の形状を変更したシリンダヘッドを製作した。
 [4] ピストン
   FEMによる伝熱解析の結果に基づき、冷却性能を向上させるため、冷却空洞の形状を変更して熱応力を低減させた、高熱負荷に耐えるピストンを製作した。
 [5] バイメタルライナ
   バイメタルライナ自体の軽量化および外径についても縮小を図るため、内径側は従来と同じ黒鉛鋳鉄ままとして、潤滑油保持性能、なじみ性を確保し、外径側をより強度の大きい球状黒鉛鋳鉄とすることにより、外径を縮小したバイメタルライナを製作した。
 [6] ファイリング付ライナ
   シリンダライナの偏摩耗防止、課題摩耗防止、鏡面化防止及び潤滑油消費量の低減を目的として、ファイリング付ライナを採用することとし、ファイリング用シリンダラポナ、ピストン及びファイリングを製作した。
 [7] セラミック溶射ライナ
   要素試験において実施した試験片による往復動摩耗試験及び熱衝撃試験により、最適と考えられるセラミック溶射皮膜を選定した。
 [8] リーレンラガーメタル
   エンジンの大出力化および高回転化に伴い、軸受条件はより過酷となるため、従来の4層構造の軸受より耐摩耗性、異物埋没性、耐荷重性等に優れるリーレンラガー軸受を製作した。
   また、エンジンのコンパクト化のため、軸受幅を10%低減したものについても製作した。
(6) エンジン試験
 [1] 過給機マッチング(2段過給化)
   低圧段過給機と高圧段過給機を直列に接続した2段過給において、低圧段、高圧段にそれぞれノズル、デフューザーなどのマッチング部品を用意し、マッチング試験を実施した。
   この結果、320mm試験エンジンにおいて、約6kgf/c平方メートルという目標給気圧力が得られた。
 [2] ピストン温度計測
   FEM伝熱解析結果を基に、冷却空洞を最適化した改善型ピストンの温度計測を、テンプラグ(硬度法)による実施した。
   この結果、最も高い燃焼室側の部分においても温度は400℃以下であることから、問題ないことを確認した。
 [3] シリンダヘッド温度計測
   冷却水流れを改善したシリンダヘッドについて、熱電対を埋没することにより、温度計測を実施した。
   この結果、燃焼室側の温度は最高で約230℃であり、問題ないレベルであることがわかった。
   但し、最も温度が高くなると考えられる排気弁−排気弁間については、熱電対の断線のため計測できなかったが、他の計測点での結果などから約300℃であることと推定され、問題ないものと考えられた。
 [4] シリンダライナ温度計測
   シリンダライナについて、熱電対を埋没することにより、温度計測を実施した。
   この結果、燃焼面側の温度は、最高で約310℃であり、問題ないレベルであることがわかった。
 [5] 各種部品解放点検、評価(ピストン、ライナ、メタル等)
  ・ピストンのトップランド部のカーボンの付着状況は、従来の形状に比べファイヤリング付のほうが明らかに少なく、シリンダライナの偏摩耗や鏡面化に効果があるものと考えられた。
  ・バイメタルライナおよびセラミック溶射ライナには、剥離や偏摩耗等の異常は見られなかった。
  ・連接棒は大端部にフレッチングの発生も見られず問題ない。
  ・ピストンリングおよびピストンについても異常は見られなかった。
  ・バイメタルライナおよびファイヤリングライナには、剥離や偏摩耗性等の異常は見られなかった。
  ・軸受表面には異常な摩耗は見られなかった。
  ・幅を低減した軸受(リーレンラガー)についても、異常な摩耗は見られなかった。
  ・シリンダヘッド燃焼面の状況は良好であり、問題は見られなかった。
  ・チタン吸気弁ではセラミック粉体肉盛を施したシート面が評価点であるが、剥離や偏摩耗性等は見られなかった。
  ・クランク軸表面には、偏摩耗性等の異常は見られなかった。
  ・カム表面にはピッチング等の異常は見られなかった。
  ・燃料噴射ポンプのプランジャ表面には、スティック傷などの異常は見られなかった。
 [6] 機関性能評価
   ミラーサイクルおよび2段過給方式の採用により、最終目標出力である出力率390(6,270PS/1,030rpm、110%負荷、従来の2倍以上の出力)を達成することができた。
   NO{10}(O2 13%換算)についても、目標出力である出力率354で約500ppmと、環境庁規制値である950ppmの約半分であることから、大幅にNO{10}が低減されることがわかった。
  サイクルシミュレーション結果との比較した場合、
  ・燃焼最高圧力を比較した場合、低負荷においてはシミュレーション結果と実測結果とが、ほぼ一致することが確認された。
  ・サイクルシミュレーションでは、ミラーカム1よりもミラーカム2の方が燃焼最高圧力が低下すると予想されたが、実験結果では低負荷域においてはその傾向が見られたが、高負荷域では逆転し、ミラーカム2の方が燃焼最高圧力が上昇した。
  この原因については、ミラーカム2では吸気弁閉タイミングを早めるため、ミラーカム1よりもカム速度(加速度)が大きくなっているが、そのため、吸気弁の動的な閉弁タイミングが遅くなりシミュレーション通りの効果が現れなかったものと考えられた。
(7) プロトタイプエンジン検討
   既存の16V32CX型エンジンをベースにして、材質変更(FCD化)によるクランクケースの薄肉化、シリンダピッチの短縮、バイメタルライナなどの採用により、出力16,720PS、エンジン重量49,878kg(重量/出力比2.98kg/PS)となるシリンダ径320mm、V型16気筒のプロトタイプエンジンの設計を完了した。
  寸法は、
  ・全長の従来の7,411mmから6,388mmに1,023mm短縮
  ・全幅は従来の2,995mmから2,414mmに581mm短縮  ・全高は従来の4,144mmから3093mmに1051mm短縮  となった。
  重量については、
  ・総重量は従来の57,096kgから49,878kgに7,218kg低減した。
  ・出力当たり重量は従来の7.14kgから2.98kgに3.16kg低減した。
  これにより重量は2.98kg/PSとなり、ほぼ目標を達成した。 

■事業の成果

(1) 320mm試験エンジン
 [1] ミラーサイクルおよび2段過給などの新技術の開発により、最終目標出力である出力率390(110%負荷、6,270PS/1,030rpm)を達成した。
 [2] ミラーサイクルの適用によりNO{10}は約500ppmとなり、環境庁規制値950ppmの約1/2に抑えられた。
 [3] エンジン試験結果(燃焼最高圧力など)とサイクルシミュレーション結果はほぼ一致し、サイクルシミュレーション手法を確立した。
 [4] 2段過給方式により約6kgf/c平方メートルという高い給気圧力を実現した。
 [5] エンジン試験後の解放点検結果では、運転部品に異常は見られずエンジン開発手法に問題ないことを確認した。
(2) プロトタイプエンジン
  既存の16V32CX型エンジンをベースにして、材質変更(FCD化)によるクランクケースの薄肉化、シリンダピッチの短縮、バイメタルライナなどの採用により、出力16,720PS、エンジン重量49,878kg(重量/出力比2.98kg/PS)となるシリンダ径320mm、V型16気筒のプロトタイプエンジンの設計を完了した。
 [1] 寸法は、全長は従来の7,411mmから6,388mmに1,023mm短縮、全幅は従来の2,955mmから2,414mmに581mm短縮、全高は従来の4,144mmから3,093mmに1,051mm短縮となった。
 [2] 重量については、総重量は従来の57,096kgから49,878kgに7,218kg低減したため、出力当たり重量は従来の7.14kg/PSから2.98kg/PSとなり目標を達成した。
 [3] 体積は47.7m3となる場合と比較すると、約1/5となった。
(3) 今後の課題
  本事業において、出力率390という世界にも類を見ない超高出力の実現および重量/出力比約2.9kg/PSという超軽量・高出力のプロトタイプエンジンの実現が可能となった。
  しかしながら、本エンジンが高速内航船に搭載され、陸上運送手法と競争し、競争力を得ていくためには、信頼性の向上をはじめ、更なる高付加価値の付随が必要と考えられる。
  以下にその項目を示す。
  ・エンジン(燃料噴射)の電子制御化
  ・主要運動部品の軽量化
  ・耐久性の向上
  ・燃料消費率の改善
  ・低NO{10}化の推進
  ・1軸2段過給機の開発





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