日本財団 図書館


2)総括

 

近年、我が国でも「とんぼ公園」や「ホタルの里」といった、生き物緑地を通じて里山環境の保全を図ろうという市民活動が盛んに行われるようになってきた。ところが、このような国内の環境NPOは、人材やモノ、資金などの様々な面でボランティア活動の限界に突き当たっているものが少なくない。今回の視察は、この限界を乗り越え、団体、ひいてはその個人が目指す理想的な活動の知恵となるものを、先駆的な活動を展開している英国の環境NPOに学ぶことにあった。

 

今回の視察を振り返ると、それぞれの環境NPOが非常に積極的に活動を展開しており、英国と我が国とでは市民活動を支える社会的なシステムが異なるものの、様々な面で参考となるべきことが多かった。また、国は違っても、環境という共通のテーマのもとに活動をしている人たちと出会い、交流を行ったことは、今回の参加メンバーそれぞれにも新たな抱負と活力をもたらしたように思う。

 

以下に視察先それそれのポイントについて整理し、総括としたい。

 

フィールド・スタディーズ・カウンシル〔F.S.C.〕

 

昨年、「寄居町にトンボ公園を作る会」の550人の会員全員を対象にアンケート調査を行った。その中で、「今後、会に期待する活動」という問に対し、「学校教育との連携」という回答が最も多く寄せられた。これは、多くの会員の間で環境教育の重要性が認識され、それを学校教育との連携で実現してほしいというものである。F.S.C.の視察は、まさにその典型的な見本となるものであった。

 

F.S.C.は、設立50年というだけあって、独自に開発した環境教育のプログラムが非常に充実していた。この環境教育プログラムは、専門家育成のプログラムから、小さい子どもや家族が気軽に楽しめるものまで、それぞれのレベルや要望に応じて幅広いプログラムが用意されている。トーマス所長によると、ここには政策決定のための環境教育プログラムまで用意してあり、時々政治家が利用しているという。これは官僚と業者まかせの我が国の政策決定過程にも是非必要なテーマではないかと思う。

 

この環境教育プログラムは、学校団体の公認・推奨のもとに学校のカリキュラムに合わせて開発されている。英国では環境教育が学校教育の中での大きな比重を占めており、取材した学校では全カリキュラムの3分の1にのぼるという。こうした社会風土があるからこそ、この事業が行政の支援を一切受けず、民間団体として十分採算ベースに乗るのであろう。

 

もう一つのポイントとしては、環境を語り、アクションを起こすことができる人材の育成プログラムも充実していることだ。F.S.C.は、環境NPOの活動を支えるためには人材育成が不可欠であるという観点に立ち、取り組んでいるのである。この点も我が国でももっと力を入れなければならないテーマであろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION