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1.視察目的

 

21世紀を目前にひかえた今日、地球温暖化や生態系の破壊といった地球規模の環境問題が顕著になる中で、先進国を中心として経済的繁栄を最優先とした社会経済システムに対する反省が生まれつつある。我が国においても、乱開発によって失われた自然環境に対する危機感が高まり、また同時に“豊かさ”に対する新しい価値観が模索され始めている。しかし、行政レベルにおいては、このような変化に柔軟に対応できる体制が整っておらず、むしろ、草の根レベルのNPOによる取組みの方が先行しているのが実状である。

 

このような動きの一つとして、近年は身近な自然環境の消失を憂い、各地で野鳥やホタル、トンボなどの生き物の生息地や里山環境の保全・創造を目指す環境NPOの活動が活発になっている。しかしながら、現在の環境NPOを取り巻く制度的、経済的状況は厳しく、環境NPOの活動を推進する社会的基盤が整っているとは言い難い面がある。また、環境NPO自身も、組織、人材、資金などにおけるマネジメント能力の弱さを指摘されており、継続的な発展を図る上で大きな課題を抱えている。

 

このような社会背景の中で、日本財団においても、近年特に環境NPOからの支援の要請が著しく増加している。そこで、当財団は、環境NPOに対する効果的な支援方策の検討を進めることとし、その一環として環境NPOの先進事例の視察調査を実施した。

 

視察先には、「ナショナル・トラスト」や「英国愛鳥連盟」に見られるような環境NPO活動の歴史と実績をもつ英国を選んだ。また、本視察をより効果的なものとするために、国内で先駆的な環境NPO活動を行っている「寄居町にトンボ公園を作る会」のメンバーに参加していただき、これまで培った経験に基づいた現場からの視点で分析していただくことにした。

 

以上のような目的のもとに、今回の視察は、特に次の4点に焦点を当てて実施した。

 

1]環境NPO活動の可能性と限界について

英国の環境NPO活動の実態を見聞し、環境NPOの課題と可能性について考察する。

 

2]自然との共生の方法について

英国で展開されている環境保全活動の方法、環境教育活動の内容、自然エネルギーの具体的かつ実践的な活用法などを見聞し、自然との共生の方向性や方法論について考察する。

 

3]農業と観光を一体化した地域づくりについて

農業と観光を一体化した地域づくりの事例を見聞し、地域の里山環境を保全する上で一つの重要な鍵となる農業振興の方向性を考察する。

 

4]パートナーシップによる事業推進について

環境NPOの発展を考える上で欠かせない市民・企業・行政のパートナーシップのあり方を考察する。

 

 

 

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