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さらに、運輸大臣は、運航管理者が運航管理規程に違反する等によりその職務を引き続き行うことが輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、一般旅客定期航路事業者等に対し、当該運航管理者を解任すべきことを命ずることができる(法10の2-?、法19の3-?、法23の2-?)。この命令は、事業者が当人を解雇することを命ずるものではないが、これにより解任をした場合は、他の者を運航管理者として選任する義務が生ずることとなる。
なお、運航管理者を解任したことによって事業者の責任は解除されるものではないので、事業者に対する輸送の安全確保命令、事業の停止等の処分をあわせて行うことも可能である。
5) 保険契約締結命令
運輸大臣は、一般旅客定期航路事業者、自動車航送貨物定期航路事業者及び旅客不定期航路事業者に対し、旅客の運送等に関し支払うことのある損害賠償のため保険契約を締結することを命令することができる。この命令は、当該事業を永続的に確保し、かつ、旅客等の利益を保護するため必要があるときに、運輸審議会にはかったうえで行われる(法19の2、法23の2)。
小規模・零細旅客航路事業者の場合、旅客の死傷事故が起こると、損害賠償の支払能力に乏しく、そのため被害者の保護に欠けるばかりでなく、その事業自体の存立も不可能になってしまう。そこでこうした事業者を損害賠償責任保険に強制的に加入させることが、事業の永続的確保と旅客の保護のために必要とされているのである。
6) 航海命令
? 運輸大臣は、船舶運航事業者(旅客船事業者に限らない。)に対し本邦の各港間の航海を命ずることができる(法26-?)。
命令できる場合は、災害の救助その他公共の安全の維持のため必要で、かつ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限る。すなわち治安が維持されない場合等緊急事態に対処するための規定であって、単に公共の福祉の増進のため必要であるというような場合には、命令は発動できないと考えられる。命令を発する場合には、航路、船舶又は運送すべき人若しくは物を指定して行わなければならない。さらに緊急やむを得ない場合を除くほか、運輸審議会にはかりその意見を聞かなければならない(法26-?)。
? このように航海命令については、いわば公共のために私権を制限するので、その発動の要件が厳格に限定されているが、さらに航海命令により損失を受けた者に対しては、そ

 

 

 

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