
[事例10.結婚相手の連れ子と養子縁組したが、離婚したい]
子どものいるフィリピン人女性と結婚したのち、その子どもと国際養子縁組をしている。
ところが夫婦仲が旨くいかなくなったので離婚したい、と日本人男性が訴えてきた。日曜日には妻が教会に出かけ、そのままフィリピン人の友人たちと遅くまで遊んでいる。幾ら注意してもなおさない。家族で一緒の生活をしたいので教会に行くことをやめて欲しいと訴えてきた。ISSJカウンセラーは夫にフィリピン人にとっての教会の持つ意味の説明をすると同時に、妻には日本人の平均的な生活習慣について説明をし、双方で譲歩しあって結婚生活を維持できるようカウンセリングを行なった。
さらに国際結婚をした日本人夫が死亡したため配偶者ビザがなくなり、オーバーステイになったため母親が行方不明になった子どもや、実親から遺棄されたり、あるいは何等かの都合で母親がフィリピンに帰国し、父親の手元に残された婚外子の子どもをフィリピンに送還したが、そうした子どもと家族の本国帰国後の適応を観察し、更にカウンセリングを行うために3人のソーシャルワーカーがフィリピンを訪問した。
親は自分たちが生れ、長年育った祖国なので、帰国後も何とか順応しているようであったが、職探しや財政困難などの問題を抱え、それらが精神的不安定に繋がっているように感じられた。また日本人と結婚したが、夫の死亡後フィリピンに帰国した妻は、祖国の人々に自分の弱みを見せたくないという意地から極端な情緒不安定に陥り、日本に帰りたいと涙を流して訴えるケースもあった。子どもたちも一見現地の生活に溶け込んでいるように見えても、各々が学校・言語・環境など何らかの問題を抱えており、短期間のカウンセリングでは真の意味での問題解決にはならないことを痛感させられた。なかでも母親が死亡し、実父が養育放棄をしたためフィリピンの祖母の元に送還された日本国籍の日比混血児兄弟はタガログ語の習得が出来ず、環境や食生活にもなじめず、早く日本に帰りたいとワーカーに訴えた。現在行政機関と連絡を取りながら日本で生活ができる方法を検討して行く必要があると思われるケースもあり、フィリピン側の担当機関と密接な連絡を取りながら、これらの元在日外国人や在外日本子児童への対応を考えている。
以上のほかにも、在日外国人に対するカウンセリングは継続して行われており、主なものとしては、国際結婚の夫婦関係、親子関係、外国人配偶者や個別難民の日本への対応などに対するものであり、これらの問題の解決もしくは緩和の一助になることを願っている。
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