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4. 車イス使用者への対応
 
4-1情報受容の特徴
1.被験者の障害状況
1)被験者Fは、転落事故で肢体不自由になった障害者で、上半身は自由に動くが歩行は不能で、指も巧緻には使えない。
2)肉体的・精神的な衰えを防ぐために、意図的に自分の手でこぐ手動式車イスを使用している。
3)他の感覚器官からみると、晴眼者で、また健聴者である。

 

2. 被験者の駅利用状況
1)鉄道は楽で速いから、できれば利用したいが、現実には家から駅までの中間に障害が多く車イスで駅へ近づけないため、鉄道を利用する機会は少ない。
2)日頃は自動車の利用が多い(自ら運転する)。
3)鉄道を利用する場合、事前に駅へ連絡するように鉄道会社から言われており、改札口から階段を通り乗車するまで、また降車駅で車内から改札口まで、駅員の介助を受ける。
4)リハビリテーションでは「自立」することを学び、日頃できるだけ自力で生活するよう努力している。鉄道利用は「介助」を前提としているから、駅員には感謝するが、矛盾を感じている。
5)介助者から担がれることで、自立意欲は喪失しがちである。
6)調査駅で自由通路を東西に抜けようとする場合、昇降設備位置をみつけることは、予備的な知識がなければ、ほとんど不可能である。
7)調査駅の東口地下街に接続するエレベーター位置は、自由通路から離れた端部にあるから、目的場所によって迂回経路は長大になり、身体的には大変な負担である。

 

3. 他の車イス使用者の駅利用状況
1)肢体不自由者の中には、楽だから電動式車イスを選択している例もある。
電動式車イスは大きくて重いため、現在の鉄道駅の状況では、巾が狭くて通れなかったり、重すぎて昇降移動ができない場合があるとのコメントがあった。
2)車イス使用者が駅員や他の利用者から担がれることに対して否定的に感じる要因には、前述した自立意欲を失うことのほかに、次のような負担などがあるという。
a.駅員等に頼むことが負担である.。
b.事前連絡をすることが負担である。
c.周囲の他の利用者の見せ物になるのがイヤである。
d.周囲の他の利用者に迷惑をかけることが悪いと思う。
e.担がれることに恐怖感を感じる。
f.落とされたら再起不能が決定的になる不安がある。

 

 

 

 

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