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【5月15・16日 プラハ】

 

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プラハの生活
5月13日、ウィーンから最後の公演地プラハヘ、バスで国境を越えました。国境で免税の手続きを済ませた後、入国審査のためまた停車。この入国審査で過去に4時間近くかかったことがあるとのこと。その問バスから外に出ることもできないので、ウィーンで買ったジクゾーパズルを取り出した数分後に入国手続き完了。新記録の30分でした。その後バスは数時間走り続け、やがてプラハの中心街を抜け、郊外にある私たちの泊まるホテルクリスタルヘ到着。バスの長い移動もあって皆さんお疲れのようでしたが、おまけに5機のうち2機しか動かないエレベーター。その日本フィルの全員の行列が待ちました。部屋は何と言っても棚がたくさんあって極めて簡素。どうぞご自由にお使い下さいといった具合で、長いホテル生活で疲れた体には、ホッとひと安心できた気がしました。窓からは一本の線路、小さな駅も見えて、たまに客車か貨物かわからないような汽車や、一度SLがゴトゴト小さな音をたてて走っていました。なにもかも石でできているかのように思えるプラハの町は、5年前より華やかな町になったような気がしました。観光客の数も非常に増え、それとともにスリやひったくりもだいぶん多くなっているようです。夕暮れにモルダウ川をはさんで逆光に霞むプラハ城の眺めは、心に残るものとなりました。
(飯島直子 ヴァイオリン)

 

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プラハに入った次のオフは地下鉄やドラムを乗り倒して観光しました。それにしても泊まったホテルはテレビも電話もなく、しかもお湯を出すと茶色の湯が出るというホテルで、まるで寮生活のようでした。さて、プラハでの演奏会場であるドヴォルジャーク・ホ一ルは、音楽の祭典である“プラハの春”にふさわしく、歴史を感じさせるホールでした。1回目の公演は、まず吉松隆の「鳥たちの時代」で始まりました。鳥たちの声がホール全体に響き、そしてpppが森の雰囲気を作り出していました。そしてラロのスペイン交響曲では、ソリストの渡辺さんが気迫のこもった熱演で観客を魅了していました。そしてファリャの三角帽子では、今まで以上の拍手で無事終えることができました。2回目では最終日ということもあって、メインプロであるショスタコーヴィチの5番では広上氏の気合いを感じさせる演奏でした。旅の最後を飾って大変な反響で、コンサート後に行われた打ち上げパーティで、“プラハの春”実行委員会の方たちも大喜びのようでした。
(高橋智史 ヴィオラ)

 

ヨーロッパでのひとりごと

 

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ヨーロッパに来て、いつも感動すること…町並みの美しさ。絵を見ているような風景。バスや列車での移動中、遠くの山の上にお城が見えてくるとわくわくしてしまう。中世ヘタイムスリップ。古い建物と石畳。馬車に乗った貴族が見えてきそう。クリスチャンではないが、教会に入ると異次元の世界に入ったようで、自分がとてもちっぼけなものに見えてくる。建設するのに何百年もかかったという、想像しがたい歳月。(日本に帰ったら歴史を勉強し直そうっと)。街はずれの小高い丘から見る風景には必ず教会の塔が見える。空に向かってすっと細く消える。画家がキャンバスにその美しさを残すように、心の奥に焼きつけて。(いつか、息子にも、こんな風景を見せて上げたい。そして素直に感動できる心をいつも持っていてほしい)。イギリスの緑はひときわ鮮やかで美しかった。庭先の寄せ植えの花々もとてもかわいかった。(うちのベランダの花たちはどうなっていることやら)。
日本に残してきた息子も、随分成長して私の帰りを待っていることだろう。1日2回、朝と夜の電話は大変だったが(時差と、電話事情の違い。テレホンカードは4ヵ国で16枚。料金…あー、クレジットカードの請求書がこわい!)1ヵ月離れていた割にはいつも電話で楽しく笑ってくれている。旅ももう終わりで、今はただ早く息子に会いたいと思うばかり。日本フィルの、そして私のヨーロッパ行きに協力して下さった方々に感謝しつつ旅を終えたいと思う。
(平井幸子/ヴァイオリン)

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