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【4月26日/バーミンガム】

 

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4月26日、ロンドンから陸路約200kmの行程でバーミンガムヘ。1昨日の本番(ロンドン、初日)での疲れのためか、ほとんどの楽員はぐっすり眠っている。本日は晴天なり。このような日にレポートを書かねばならぬ役割は酷なものだ。
ロンドン市街から少し離れると緑の牧草地帯が延々と続く。羊や牛がのんびり昼寝をしているのを車窓から眺めていると、今日も本番があることを忘れそうになる…(いかんいかん)
2時間も経過すると、突然景色が工業地帯に変わってしまった。どうやらロンドンからバーミンガムの入口らしい。本日の宿はハイアット・リージェンシー・バーミンガム。なんと会場とはBフロアの渡り廊下でつながっている。この便利の良さは、おそらく他の外国のオーケストラがこの地を訪れる時もこの宿を使っているのではなかろうか。
ホールの前には広場があり、数件のレストラン、カフェ・バーが並ぶ。広場中央には噴水、手前には、この近代的な街を象徴するようなイメージを持つモニュメントが建っている。またホール裏手には運河があり遊覧船らしき小舟が3隻連なっている…夕暮れになるとネオンが運河を灯し、市民の憩いの場としては最高のシチュエーションができあがる。
このホールは6年前に、市がサイモン・ラトルとバーミンガム市響のために建てたもので、最新の設備と音響を誇っているとのこと。演奏してみると、さすがに音の響きに手応えがあり、昨日のロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールの響きがデッドであったため、なおさら良く響く。日本フィルはこの日も快調、客席のノリも良く、“ブラヴォー”の嵐であった。
今日、イギリスは経済、文化ともに全般的に下り坂にあると聞く。ロンドンほど歴史を感じさせない趣のあるバーミンガムの町並みは、長く変わらないものを尊ぶ気持ちと共に、新しいものも積極的に受け入れようとする気風を強く持ち合わせているように思える。その市民の気持ちが、バーミンガム市響を発展させ、新しいホールを建設し、街を作り、そこをひとつの憩いの場として街全体を活性化させようとしているのではないだろうか。
市民の中に音楽が根付いたひとつの成功例として、考えさせられる街であった。
さて、明日はロンドン経由、空路アムステルダムである。まだまだ旅は始まったばかり。これからどのような体験が我々を待っているか楽しみである。
(福島喜裕 パーカッション)

 

【4月27・28日 アムステルダム】

 

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今日(4月27日)は朝早く、バーミンガムからバスでロンドンに向かい、ヒースローからアムステルダムに飛ぶという移動日でした。
ほとんど着いたその足で、ネザーランド・フィルが催してくれた歓迎パーティに臨みました。会場は、昔株式取引場だったものを改築して、ネザーランド・フィルが根拠地にしている、歴史の重さとシャープなモダンが素敵にミックスされた、羨ましい限りの建物です。
5年前の日本フィル・アムステルダム公演時、指揮者だった小林研一郎氏が当時ネザーランド・フィルの指揮者を兼任していたのが縁で、歓迎会を開いてくれたのがそもそもの始まりです。その後のネザーランド・フィル日本公演時には、我々が彼らを招くという、オーケストラ同士では珍しい友好関係ができ、今日の再会となったわけです。「久しぶり」と喜び合う中でも、良い関係を続けようという声がたくさん聞かれました。
おいしいワイン、高級インドネシア料理、たくさんのデザートに、旅の疲れも吹き飛んでしまいました。
音楽家のパーティの強みで、いろいろな出し物があり、両方の打楽器奏者が総出で、楽器を何も持たず、拍手、足踏み、胸を叩き、服をこすり、奇声を上げ、飛び上がって終わるという、エンターテインメント性に富んだ曲を披露してくれ、やんやの拍手を受けていました。中でも楽しかったのは、15人位のビッグバンドの演奏で、驚いた事にヴィオラ奏者がトロンボーンを吹いたり、テューバ奏者がサックスを、という具合に専門とは違う楽器を担当しながら、ちゃんとしたビッグバンドサウンドが響いているのです。訊いてみると、楽器がいくつもできるのはそんなに珍しいことではないそうで、そんな所にもヨーロッパの人々と音楽のつながりの深さ、歴史の重みを感じさせられました。
“感心しているばかりが能ではない”とばかりに、私も興に乗って昔取った杵柄で、オランダの美しいレディーとダンスを一曲楽しみました(もちろんチークダンスなんかではなく、ジルバを!)。
(大川内払 コンサートマスター)

 

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4月27日(土)、ロンドンからアムステルダムヘ移動。
ロンドン、ヒースロー空港から飛行機でオランダ上空にさしかかると、窓からカラフルな花の絨毯がたくさん見えました。「ようこそ、花の国オランダヘ!!」という感じでした。夜7時からは、ネザーランド・フィルのウェルカム・パーティでした。ネザーランド・フィルのメンバーが趣味でやっているというJazz Bandの演奏。それぞれ自分の専門外の楽器を演奏しているそうで、例えばトロンボーンを吹いているのはヴィオラ奏者だとか…!!?
友好のしるしに日本フィルからはオリジナルTシャツをプレゼント。私達は彼らのライヴCDをおみやげにいただきました。
4月28日(日)本番の日。今日は快晴の気持ち良い天気でした。午前中、ホテル近くの広い公園を散歩しました。鶏がいたる所に放し飼いされています。水仙やチューリップ、名もない(?)健気な花だちがあちこちに咲いています。木々はちょうど若葉の季節でしたが、ところどころに桜の木があって、それらは満開でした。しかしさすがに桜の木の下で花見をする習慣はないようでした。
今日は国民の休日なので家族連れや散歩をする人などで公園はにぎわっていました。4月30日が女王様の誕生日ということで、その日を含む1週間は休日なのだそうです。園内のカフェテラスで簡単な昼食をとりました。旅行中のこういうのんびりした時間というのは本当によいものです。
本番後の夜食を調達するために、早めに街(会場)に向かいました。休日なので店はほとんど開いておらず、コンセルトヘボウから15分程探し歩いて、サラダやサンドイッチ、ビールなどを買いました。そうこうしているうちに、行こうと思っていたゴッホ美術館が閉館してしまい、残念でした。
本日のプログラム(コンセルトヘボウにて)

 

 

 

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