日本フィル創立40周年を迎えるにあたり、「聴衆の皆様と楽員の間をもっと身近に」との思いをこめてのこのコーナーです。ステージ裏の“普段着”の横顔をご紹介します。今月のこのコーナーは、首席ヴィオラ奏者の後藤悠仁です。 サービス精神旺盛な彼は、いつでも自ら進んでお客様との触れ合いを求めます。ある時は、楽器ひとつ小脇にかかえ被災して間もない神戸に向かったかと、思うと、またある時は、サンデー喫茶室(サンデーコンサート終了後のお客様と楽員との懇親会)のマスターとして活躍…果してその実態は? 後藤:僕の顔は『ヨーロッパ公演の募金のお願い』で覚えていらっしゃる方も多いんじゃないかな?いつも演奏終了後ロビーに出てきていたから。募金して下さった皆さん、そして熱烈な工一ルを送り続けて下さった多くの皆さん、ご支援本当にありがとうこざいました! ―現地新聞での日本フィルの批評、なかなか良いですね。 後藤:そうなんだ。嬉しいね。日本のオーケストラも最近はヨーロッパで演奏会を行なうことが多くなってきたでしょ。でも、行って演奏するだけじゃもうダメ。現地のホールから次の演奏会の誘いが来るような、質のよい演奏を行なわないと。かなりハードなスケジュールだったけど、演奏自体は良かったと、思う。スタンディング・オペイションが出たコンサートも多かった。 ―でも、今回のヨーロッパ公演は経済的には決して楽ではありませんでした。
後藤:そう。だから、募金をして下さった方々には、僕たちのお礼の気持ちを伝えたくて、現地から手紙を出したんだよ、全員でね。でも、こういった募金のお願いやお礼の挨拶などを通して、オーケストラのみんなが、今回のヨーロッパ公演の意義を自分なりに感じていったんじゃないかな。結果として、全てがいい方向で、音楽に影響したと恩うよ。 ―ハード・スケジュールの中で健康管理は一番の… 後藤:日本フィルのみんなは、そんなヤワじゃないよ(笑)。日本でも地方公演が多いから、みんな旅慣れてるしね。遊ぶ時間なんかないくせに、朝早く起きてでも、遊ぼうとする。みんなどうみても元気、元気、タフだったねえ。これからの音楽家はスポーツ選手と一緒、身体が資本だよおう。まず身体を鍛えてから音楽をする。(笑)これだ! ―そういう後藤さんは、どちらに? 後藤:ヴァイオリンの松本克巳さんと、風光明媚な所をまわって来た。彼は写真家でもあるから、いろいろなところに連れていってくれるんだ。スメタナの「わが祖国」の第5番に“ターボル”という曲があるでしょ。これはボヘミアの南部の町の名前なんだけど、プラハから電車を乗り継いで行ってきた。小さな城壁に囲まれたターボルは昔の街並をそのまま残した田舎町。きれいだったねえ。でもプラハから電車で1時間半のつもりだったのに、20分遅れて出発、その上、途中で急に電車を降ろされちゃって… ―また、後藤さん!何かやってしまったんですか? 後藤:また、って何よ(笑)。僕のせいじゃなくて、動かなくなってしまった電車が、自分達の乗った電車の進路を塞いでいたんだ。そこで仕方なく、全員バスに乗り換えて、次の駅で新しい電車に乗ってターボルヘ。結局、3時間かかった。 ―話は変わりますが、後藤さん、いよいよ夏が近づいてきました。サマーコンサートの季節ですね。 後藤:毎年、日本フィルの楽員がお客様と最も交流を深めることのできるコンサート。山登りあり、バード・ウオッチングあり、夜の宴会あり(笑)。あっ、勿論コンサートも盛り沢山ですよ。今年の目玉は、藤岡幸夫指揮のハイドンの交響曲「悲しみ」。楽員一同、皆様とお逢いできる事を楽しみにしています。 ―最後に定期会員の皆様にひとこと。 後藤:日本フィルの定期のお客様は、指揮者、ソリストより日本フィルの演奏が好きでいて下さる方が多いと聞きます。ありがとうございます。今年の秋のシーズンは、創立40周年シリーズのいよいよ締めくくり。今までの日本フィルとは違う新しい「挑戦」のシーズンでもあります。とにかく皆さん、ホールまで足を運んで欲しいし、よ〜く聴いて欲しい。僕は日本フィルの定期演奏会の雰囲気を変えていきたいと思っているんだ。聴衆と演奏家との枠をなくして、もっとつながりが持てるような演奏会にしたい、皆さんが自分達のオーケストラだと。思えるような。僕らは、皆さんが日本フィルの演奏をまわりの人々に語りたくなるような、そんな演奏を志します!
聞き手:星野究(tp) 文責:編集部
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