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5.スタッフとして参加した立場から −その2−
 
平良 英二(国立久里浜養護学校)

 

初対面のK君に「K君おはよう」と挨拶すると「おはようでない」と返事をした。母親によると「〜したくない」という時の意思表現であると説明していた。つまり「今は遊びに夢中なので挨拶どころではない」と言うことだろう。
K君は、家から持ってきた怪獣の玩具を箱から取り出し、声を出しながら「怪獣ごっこ」をしている。そこへ私が「この怪獣な〜に?」と聞くと「ガメラ」と答えてくれた。そしてひとつを私に手渡し、「ギャーオー」という声と同時に自分が持っている怪獣をぶつけては喜んでいる。K君が私を遊び相手として意識してくれるのに時間はかからなかった。砂場では、バケツに砂を入れては、ひっくり返し型どりしたあと、「ホットケーキだ」「グラタンだ」と言って元気な声を出していた。また砂をつまんでは「イチゴも入れようヨ」と言うなど日頃の生活観がうかがわれた。
2日目、大きな声を張り上げて先生たちの身体の動きに合わせて楽しく動物体操をしている。K君の得意とする活動のひとつである。動物図鑑の本や虫を探したりことが好きで年齢に応じた遊びがあり情緒面の豊かさも感じる。母親によると普段は、一人遊びがほとんどで友達と遊べないと話していたが、今日は、珍しく皆んなと楽しくよく遊んでいると言ってその様子を見ていた。
自閉的傾向の子どもは、一般に認知力の弱さというよりも相手の感情を読み取ることに欠けると言われている。そのため一緒に遊ぶことができなかったり共感が持てなかったりするという。K君は「自分の世界の閉じこもっている」という様子はそれほど見られず、自分と楽しさを共有できる遊びであれば、ある程度社会性が身につく子どもである。大人は子どもに対して、こう育って欲しいという願いがあり、日頃から子どもに迫ることが多いが、子どもの論理(立場)に立って見ていくことも大切であると感じた。
最近、障害もひとつの「個性」として見ていくと言われているが、保護者の立場はそう寛大な気持ちだけではないだろう。実際のところ差し迫った問題をどう解決していけば良いか悩んでいるところである。
講習会の初日、ある母親が「帰りたいので明日、主人に迎えに来てほしい」と私に漏らしていた。講習会への参加が負担になっているのか?とも思ったが、結局最後まで参加して、閉講式では涙ぐんでいた様子も見えた。我が子の成長を見守ってくれる多くの人たちの話や保護者同士の交流から、その母親は安心感を持ったようにも見えた。
我が子の発達に対して親が不安を持ったときに頼りになるのは、身近にある相談機関である。一般に教育現場の者が子どもや保護者を対象として行うことは、子どもの障害上の問題や養育の相談及び就学の相談が多い。
しかし、養育上の問題をひとつ取り上げてみても、教育現場で全て解決できるケースは少ない。子どもの状態によっては医療的なケアーが必要な子どももいる。いわゆる障害をもつ子どもは教育や医療がその他の関係機関が密接に連携のもとで養育されていくことが望ましい。いずれにしても各々の

 

 

 

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