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で、日中の講義で聞いた理論が実際現場のスタッフの中でこんなふうに消化され、実践されていたんだと実感してもらえたようだ。これは、隠れたヒットメニューであったと思う。

 

(3)親子受講者の事例検討

?@集団活動に参加できないので保健婦から受講を勧められてきた親子
保母や保健婦から熱心に勧められてはいるのだが、なかなかその気になれないでいる母親。それでも「保健婦さんも一緒に参加してくれるのなら行ってもいい。」ということで渋い表情でやってきた。保母さんも運動会を翌日に控え超多忙であるにもかかわらず同行してくれた。母親はあまり積極的に子どもとかかわろうとするタイプではなく、遠巻きにして眺めている様子だった。それでもわが子がスタッフや保母さんと関わっている姿を見ているうちに少しずつうちとけてきた。午後になってから、次第に親として実感している子どもの問題点や自分のことなど話してくれるようになり、翌日は個別面談や講義も熱心に耳を傾けてくれた。しかし、子どもが体調を崩して途中で帰ることになったのだが母親はとても残念がり、帰省後も保健婦さんを通じてコンタクトを取り合った。受講以前はずっと拒否して耳も貸さなかった福祉手当も受けることにし、家庭内で母親としてやれることに積極的に取り組もうと努力しはじめた。とにかく一番変わったのは保健婦が訪問してみて母親の表情が明るくなったということである。今まで話をするのもあまりいい顔をしてくれなかった母親が、お茶菓子まで準備して待っていてくれるようになってきたとのことである。

 

?A就学に関することが主訴であったが、先輩の体験談や同室の親との語らいから立ち直りを見せ始めた母親
就学を来春に控え、幼稚園での集団活動にも問題が残る子を抱えて、少々落ち込んだようすで参加した母親であった。1日目は子どものようすもあまり目に入らず講義も耳に入らないような状態だったが、夜になり一緒に参加した親や体験発表をしてくれた障害児を持つ先輩の親の話しを聴いているうちにだんだん元気になってきたようだった。受講後に取ったアンケートには「身内でも本当にこの悩みをわかってもらえない」と随分ストレスがたまっていたようなことが書かれていたが、帰る時はスタッフから「あのお母さんあんなに明るい人だったんだ」と思わず声が漏れていた。
特に就学が近づいてくると、どうしても目先にある大きな生活の変化に対して気を取られてしまうことが多くなりがちで、つい焦りが表面化してしまう。この母親の場合は、今この子に必要な養育上の課題は何かということより、自分の気持ちをわかってもらうことと見えない先の不安(子どもの就学)について少しでも情報が欲しかったのではなかろうか。そこに自分と同じような立場で生活している人を見て自分をわかってもらえた事、先輩から子どもと共に歩んだ道の話しを聞くことにより先が少し見えてきた事で大きく深呼吸できたのではないだろうか。

 

 

 

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