
グローブ座セミナー
稲葉麻里子
第2回 恩地元子(おんち もとこ)
「シェイクスピアに触発された音楽」
開催日:1996年6月22日(土)
参加者数:19名
音楽評論、特に20世紀の舞台芸術に造詣の深い恩地氏による、シェイクスピアと音楽についての講演。
古くはパーセル、最近ではマイケル・ナイマンまで、シェイクスピアの作品は多くの作曲家を魅了し、美しい音楽を生むきっかけとなっている。この回では特に「ロミオとジュリエット」を中心に、作曲家のシェイクスピアへの取り組みを考察した。
シェイクスピアの作品の「音楽化」には、原作そのものに触発されて、交響曲など器楽や声楽曲を作る場合、台本をリブレッティストがオペラ用におこし、オペラとして作られた音楽(ヴェルディやグノーなど)、作品をテーマとして作曲家が自分の音楽にシェイクスピアを取り入れたもの、そしてシェイクスピアを上演する際、台本に音楽演奏が指示されている箇所、また芝居のBGMなどいわゆる劇付随音楽(インシデンタル・ミュージック)がある。オペラになっている作品は、(ロメオとジュリエット)(マクベス)(オセロ)など、現在でも頻繁に上演されているが、インシデンタル・ミュージックの場合は楽譜としてきちんと出版され、残っているものが殆どないため、数は膨大であろうが現在演奏されたり、聞くチャンスがあるものは少ないという。 オペラの例として19世紀のフランスの作曲家グノーと、1953年生まれのフランスの中堅作曲家として活躍する、パスカル・デュサパンが昨年発表した「ロメオとジュリエット」が紹介された。グノーの「ロメオとジュリエット」は、究極の恋愛ドラマと言われるにふさわしい、甘くロマンティックなメロディに綴られたオペラで、対してデュサパンは、「ロメオとジュリエット」を題材に彼の演出家のパートナーが台本を大幅に書き換えて、オリジナルに仕上げ、主人公二人の会話が英語、フランス語の両方で歌われ(語られ)る極めて実験的な作品。シェイクスピアの「言葉」と「音」に挑戦した舞台作品であった。写真で見る限り、いかにも現代風な風貌のデュサパンとパートナー(パスカル・ジョリヴェ)だが、シェイクスピアという古典にも取り組んでいるようだ。また、現代の他の作曲家でも、ドイツのライマンが「リア王」をオペラにするなど、新しい作品は絶えないようである。
話は作曲家と作家(ヴァイルとブレヒトなど)、振付家(ケージとカニンガム)、演出家の共同制作にも及んだ。学術的な知識、資料に裏打ちされた、しっかりとした内容の講演であったと思う。
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