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ごあいさつ

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社団法人教育演劇研究協会 理事長 山下保

本日は、私ども社団法人教育演劇研究協会設立四十周年(劇団たんぽぽ創立五十周年)記念事業『龍の子太郎』全国縦断公演に、遠路お越し下さいましてありがとうこざいます。
「劇団たんぽぽ」の旗揚げは長野県篠ノ井でした。以来実に五十年の歳月が流れ、創立主宰者小百合葉子が亡くなってからでさえはや十一年です。光陰矢の如しとは申せ、あらためて感無量の思いがあります。
小百合と共にあった四十年は、復帰前の沖縄公演に象徴されるように激動の四十年そのものでした。その後の十年は、失った大黒柱を皆の合議でおぎない、小百合がかかげた理念を継続するひたすらなる歩みでした。
いまさらながら、五十年という歳月の重さ、小百合が残したものの偉大さを実感いたしております。”子どもたちに夢を”という小百合の意志は、若い劇団員がしっかりと受け止め、引き継いでいっております。
いまや、子どもたちをとりまく状況は、リュックを背に村から村へ移動公演を続けた時代から比べれば隔世の感です。
全国的な演劇教室の普及、全国子ども劇場・おやこ劇場運動のひろがりなど目を見張るものがあります。そしてまた、国の政策も、芸術文化振興基金や「アーツプラン21」に見られるように、文化に光が当てられつつあります。
こうした中で、社団法人教育演劇研究協会は、児童演劇の普及と情操教育の育成を目的に、「劇団たんぽぽ」を通じた実践を続けてまいりました。
子どもたちと直に接する実践のなかにこそ、私たちの思い描く世界があるものと考えたからでした。しかし、五十年をへて私たちはいま痛切に思っています。それは、芸能ジャンルの、とくに児童演劇にたずさわる人々の経済的基盤のなさです。社会水準をはるかに下回る現状なのです。理想高くと思っても、この現実があるかぎり子どもたちへの舞台芸術の手渡しが痩せていくのではと懸念いたします。これらを克服し、経済的基盤を確立することが、次の世代に引き継ぐための責務とさえ思われます。
心を豊かに、経済的にはほんの少しゆとりを。決して突出したものを望んでいるのではありません。人間が、”生きる”ということの平均点を望んでいるのです。そしてそれは、本日の『龍の子太郎』が投げかけているテーマでもあるのです。

 

 

 

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