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摘要

 

かつて水田、水路、ため池などからなる稲作水系に豊富に見られた水生昆虫は、水田そのものの消失、あるいは圃場基盤整備、水質の汚染などにより激減している。その一方で山間の水田が放棄され、それらの休耕田は荒れはじめている。そこで、本研究では水生昆虫のビオトープ造りの基礎データを集積するために、休耕田を利用してため池を造成し、水生昆虫の種数や個体数の推移を継続的に調査した。調査地は大阪府豊能町山間部の棚田の最上部の休耕田に設定し、1996年5月上旬に面積約180m2のため池を造成し、水深の浅い区(約10cm)と深い区(約20cm)を設け、さらにそれぞれを除草を行わない区と選択的に除草を行う区とに2分して管理した。調査は6月23日から11月19日まで毎週1回行い、畦の上を歩きながら、畦から1m以内のため池内にいる水生昆虫を目視あるいは捕獲して確認し、4つの区ごとに種と個体数を記録した。
その結果、ため池造成時にはマツモムシとヒメアメンボの2種のみであったが、調査開始時には7種が確認され、その後徐々に種数は増加し、9月中旬に18種に達した後、減少した。この調査で、総計26種5956個体の水生昆虫が確認された。優占種は個体数の多い順にマツモムシ、ヒメアメンボ、ホソミイトトンボ、オニヤンマ、ヒメゲンゴロウで、この5種で個体数において85%以上を占めた。全種を含めた個体数は、6月下旬、9月中旬、11月上旬にピークを示したが、それらは、いずれもマツモムシ、ヒメアメンボの増加によるものであった。池全体の平均多様度(H')は調査開始時が1.6で、その後は徐々に高くなり、9月上旬に2.3と最高値を示した後低下し、10月下旬に1.0と最低値を示した。4つの区についてみるとマツモムシ、ヒ

 

 

 

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