日本財団 図書館


自然環境であったことを示すと言えるかもしれない。これらの種がこの管理区に集中した理由として、水深が浅く、日照時間が最も長かったため、水温が高かったということがあげられる。また、この管理区ではホソミイトトンボが集中して見られた。本種は雌雄が連結して水面付近の植物組織内に産卵することが知られている(石田ら,1989)。本調査地でも、この管理区に自生していたヒメホタルイに本種の雌雄が連結して止まっていたのが観察されたため、この植物を産卵場所としていたと考えられる。
各管理区の水生昆虫群集間の類似性について、マツモムシとヒメアメンボを除いた24種を対象としてCπ指数を用いて解析した結果は、浅水・除草区と浅水・放置区の水生昆虫群集が最もよく類似しており、深水・放置区は他の3区とかなり異なった群集が成立していたことを示唆した。これは水深の違いが水生昆虫の生息に大きな影響を及ぼすことを示すのかもしれない。しかし深水・放置区には流水域があったことから、前述のように水流や水温、水質が関係したことも考えられる。

 

4.水生昆虫の季節消長
ため池全体について考察すると、6月下旬と9月中旬から11月上旬の個体数のピークはマツモムシとヒメアメンボによって作られたと考えられる。種数については、9月中旬に18種のピークのある一山型であったが、平均多様度は各管理区で見られたほど増減しなかった。これはため池全体で種数が同時に増えるのではなく、各管理区でそれぞれ時期がずれながら種数が増加したためと考えられる。
マツモムシとヒメアメンボを除く24種を対象として、各月のため池内の水生昆虫群集の類似性をCπ指数を用いて解析した結果、6月と7月および9月と10月と11月の昆虫群集がよく類似していたことにより、7月から8月にかけてまた8月から9月にか

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION