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のように卵で越冬して、孵化して発生したもの、ホソミイトトンボなどのトンボ目やマルバネトビケラなどのトビケラ目のように、成虫がため池に飛来して産卵し、発生したと考えられるもの、ヒメゲンゴロウなどのコウチュウ目やマツモムシとヒメアメンボを除くカメムシ目のように、飛来し発見された成虫そのもの、という4つのグループに分けることができる。いずれにせよ、水生昆虫はどこかから飛来することから、都市公園のように、水生昆虫の供給源から遠い場所にため池を造成した場合には今回のような急激な種数の増加が見られるとは限らないであろう。

 

3.各管理区の特徴
深水・放置区は調査開始初期から種数、平均多様度が高かったが、これはこの管理区に流水域があり、この場所に他の管理区ではほとんど見られないミズスマシ、マメゲンゴロウ、ヤスマツアメンボが初期から局所的に確認されたためと考えられる。その理由として、この3種が、流水を好む、水温の低いところを好む、富栄養化の進んでいない水を好むの3つが考えられるが、現時点ではこのいずれが重要であるかは不明である。ヤスマツアメンボについては、周囲の植物がおおい被さり、日陰になるようなところに多いとされる(立川,1996)が、深水・放置区は日照時間が短く、また、特に流入域はスギ林の陰になるなど、このアメンボにとって好適な環境であったと考えることができる。マメゲンゴロウは一般に止水域に生息するが、あらゆる水域に見られるとされ(森ら,1993)、今後マメゲンゴロウをこの場所に集中させた要因について検討する必要がある。深水・放置区では調査期間を通して確認された種数が17種と他の管理区と比較して少なかったのは、日照時間が短く、水温が低かったので、他の種にとって生活しにくかったためと考えられる。
深水・除草区は、他の3区に比べて最も調査期間中の確認のべ個体数が多かった

 

 

 

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